青零(セイレイ)

映像制作・作詞担当のアオねこ(aoneko)と、ボカロP・トラックメーカーのヒズミ零(cutable)の情報をまとめた公式ブログです

【楽曲解説】The Beginning of Dream

楽曲情報

cutable『Dream Diary Page.01』Track.02

The Beginning of Dream

 

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今回も、前回に引き続いてDream Diary Page.01の楽曲解説です。

頑張っていこう~。

 

The Beginning of Dreamについて

この曲は曲名の通り、夢の始まりをテーマにした曲になっています。

お兄ちゃん曰く「ゆめにっき派生でベッドに入って夢の世界に行くと、大抵ベランダに立ってる」とのこと。

それで、そのときの音楽はビートがなくて、アンビエントチックなんだよねという話になりました。

ただ、明るくて落ち着くようなアンビエントではなくて、ちょっと暗い雰囲気。だそうです。

 

僕は「ゆめにっき」を少しプレイしたことがあるんですが、言われてみれば確かにそんな感じでした。

他のゆめにっき派生もちらほら見せてもらったことがあるんですが、だいたいのゲームは夢の始まりはAmbientから始まってます。

Dark Ambientの派生もちらちらありましたね。

 

それで、このアルバムのテーマは-Light and Dark-、すなわち光と闇です。

実はこのアルバム、「光をモチーフにした曲」と「闇をモチーフにした曲」が交互に並ぶようになっています。

前回紹介したTrack.01は光、今回紹介するTrack.02は闇、次回紹介するTrack.03は光…といったように。

最後の2曲は例外なんですが、奇数番目が光、偶数番目が闇となっています。

1曲目がすごく明るかったので、2曲目はその反対にめちゃくちゃ暗くダークな曲調にしてみた、という感じです。

 

この曲にはいろいろな効果音が登場します。足音、風音、ドアの音、衣擦れの音など…。

この効果音で物語を描いてます。かなりストーリーチックな曲です。

 

曲の最初では衣擦れの音がします。夢のなかで「誰か」が目を覚ます瞬間です。しばらくもぞもぞしています。

しばらくすると、その主は歩き出します。少し歩くとその人は立ち止まってしまいます。

聴こえてくるのは甲高く不愉快な金属音です。まるで耳鳴りのよう。

その人は耳鳴りを振り払うように、少し早足で歩き始めます。でも、立ち止まっても耳鳴りが止まりません。

そのうち、その人は逃げるように走り出します。しばらくすると、少し疲れて減速します。そしてまた、立ち止まります。

ですが、その人はまだ、早足でさらに先へ行こうとします。途中、歩みが遅くなります。階段でも降りているのでしょうか。

一歩、二歩、三歩。ドアが開く音がして、ドアが閉まる音が空間に反響します。

 

…といった感じの流れになっています。物音だけで物語を作るのは大変でしたが、面白かったです。

 

ちなみにこの曲はこのアルバムで最初に作って完成させた曲です。

この頃はあまりサンプルパックを持っていなかったので、効果音以外は自力で頑張って作った感じがします。

それでも在りもののシンセとか音源を使ったので、100%自作とは到底言えないのですが…。

でも、そんなこと言ったら、パソコンもDAWも自作しなきゃ100%自作とは言えないもんね。

100%自作なんてほぼありえません。サンプルパックを使えど使わずとも、多少は他人の力を借りているわけです。程度の問題です。

 

あ、BPMの話を忘れていました。

この曲は84BPMです。

夢の始まり、8(は)4(じ)まり…という経緯で84BPMになりました。決め方が雑です。

 

使用した音源

今回はこれまでにあまり使ったことのない音源を使いました。

どれも面白い音源なので、Ambient好きの方には是非知ってもらいたい音源です。

 

パッド 

まず、曲の最初から最後までずっとなっているほわーんとした環境音。

これにはBIG FISH AUDIO「Ambient Black」というKontakt音源を使用しています。

BlackがあるということはWhiteもあります。今回は使っていませんが、Ambient Whiteという音源もあります。どちらも良い音源です。

 

 

前者はその名の通りDark Ambientに合いそうな暗い環境音に特化した音源。

反対に後者は、綺麗系のAmbientに合いそうな明るい環境音の音源です。

今回はDark Ambientを作りたかったので、前者を選びました。

 

この曲ではAmbient Blackを2つ重ねています。

2つの音量バランスをオートメーションで変化させることにより、複雑な音色になるようにしています。

どちらも「Light Suspence Drone」というプリセットを使用していますが、それぞれA3とA5で鳴らすことで、雰囲気の違う音にしています。

A3で鳴らすと比較的静かな音が鳴りますが、A5で鳴らすと不安感の強い音になります。

A3とかA5というのはピアノロールの話です。Aはラのこと。3と5はオクターブの違いです。間違っても紙のサイズではない。

 

パットその2 

それから、主人公が走り始めるときに後ろでひっそり鳴っている音は、Native Instruments「Ethereal Earth」です。

公式の説明には「民族楽器とシンセの音をブレンドしたアンビエント系音源」みたいなことが書かれています。

 

僕は最初「え~民族楽器~?興味ないなぁ…」と思っていました。

僕にとって民族楽器というものは、楽器なのかどうかすら分からない謎の打楽器とか、癖のある音色を放つ謎の木製楽器とかのイメージしかありませんでした。

なので、最初は「ビジュアルは綺麗だけどなんかよく分からん音源」という印象でした。インストールさえしてなかったかも。

 

しかし、何かの弾みでインストールして音を出してみたところ、思ってたより好みの音源だということが発覚しました。

思えば、カリンバとかオカリナみたいに、綺麗な音がする民族楽器も確かに存在していました。

音源の印象としては、思ったより「得体の知れない異国感・民族感」が少なく、曲に馴染みやすそうだなという感じです。

普段EDMしか作らない人からすれば、Native InstrumentsといえばMassiveの印象しかないかもしれませんが、意外とAmbientにも合う音源がちらほらあります。

 

プリセットがそれほど多くないので「そんなに色々音を出せるわけじゃないのかぁ」と思いがちですが、実はプリセットは出せる音のごく一部。

Ethereal Earthは2つの音を単純に音量のバランスで混ぜ合わせることで音を作っています。

その2つの音の組み合わせは無数にあります。その中から、あらかじめ「この音とこの音は合いそうだよな」と用意されている組み合わせがプリセットというわけです。

なので、プリセットにはない組み合わせで音を作ることも可能、というわけです。

 

今回は「Pads」のなかに入っている「Eternity」というプリセットを使いました。

この当時はこのことに全く気が付いていなかったので、プリセットの音をそのまま使っています。

まぁ、プリセットは楽をして良い音を出せるので、ね…。

 

使用したサンプルパック

今回はそんなにサンプルパックを使っていません。

 

効果音 

というのも、足音とかドアの音とか、そういう効果音を取り扱ってるサンプルパックが見つからず、フリー音源素材のサイトから音を引っ張ってきたからです。

実は足音とかドアの音を専門に取り扱っているサンプルパックはあるのですが、当時の僕は知る由もありませんでした。

ちなみに、BLASTWAVE EXというレーベルがこういう効果音を取り扱ったサンプルパックを数多くリリースしてます。

Spliceでしか販売していないレアなレーベルです。

 

そのフリー音源のサイトですが…まぁ…調べれば出てくるし…紹介しなくてもいいよね。

僕はそのサイトに個人的な恨みがあるので意図的に紹介を避けます。

出典表示義務はないし、まぁ、良いでしょう。

恨みの内容は…そのサイトの利用規約を読めばちょっとは分かるかな。

うちの兄ちゃんは憤慨してました。

 

シンバル 

今回一番使ったサンプルパックはBLACK OCTOPUS「Ambient Selection by AK &Tim Schaufert」です。

このサンプルパックには「Bowed Cymbals」という、シンバルを引っ掻くように鳴らした素材があるのですが、それをなんと20個くらい使いました。

同じ素材ばっかり使いまわしてるとバレるよな…と思ったので全部別の素材です。今思うとやりすぎ。

 

このシンバルの音にSoundtoys「Decapitator」をかけています。

 Decapitatorはディストーション系のプラグインですが、そのなかでも僅かな歪みを与えて倍音を増やすことを目的としたサチュレーションのプラグインです。

 

本来は少しだけ歪ませるためのプラグインですが、こいつを使って思いっきり音を歪ませました。

そうすることで、シンバルの音が耳障りな金属音に変身します。これを耳鳴りに見立てました。

 

今回は「Bowed Cymbals 003」「006」「009」「016」「022」「023」「029」「030」「032」「037」「039」「040」「042」「049」「050」「052」「066」「069」を使っています。

書き出すだけでも一苦労。っていうかわざわざ書かなくても良かった気がする。

 

ちなみにDecapitatorを含んだSoundtoys全部入りバンドル「Soundtoys 5 Plugin Bundle」もあります。

Soundtoysのプラグインはどれも素晴らしいので、お金に余裕のある人はぽんっと全部買いしましょう。

ちなみに学生版もあります。僕は大学を卒業するまでにこいつを買う予定です。

 

効果音その2 

あと使ったサンプルは風の音と機械音くらいですかね。

そうそう、言い忘れてました。この曲では途中から、後ろの方で機械がガコガコ動くような音がわずかに鳴っています。気が付きましたか?

これはサンプルパックなのか分からないんですが、VIDEO COPILOT「MotionPulse Brack Box」というサンプル集を使いました。

 

お兄ちゃん曰く、このレーベルは映像系のプラグインを販売してる会社らしいです。

なんですが、そこのリーダーであるアンドリューさんという人がすごいらしくて「Sci-Fiな映像に合うサウンド集を作ったらみんな便利じゃないかな」的なノリでサウンドエフェクト集を作っちゃったみたいです。

実際、音のクオリティがめちゃくちゃに高いです。映画に出てきてもおかしくないくらいカッコイイ。

しかも、音楽だけやってる人は知らないかもしれない素材集。

 

それはすごいね~ということで、お兄ちゃんに買ってもらいました。

このサンプル集は5つのカテゴリーがあって、それぞれ単品でも売られてるみたいです。

でも、まとめて買った方が断然お得ですね、こういうのは。

 

今回は「ORGANIC」から「Wind_Howl_01」を使いました。風の音ですね。

それと、後ろで鳴らす機械音として「VELOCITY」から「Space_Atmospheric_02」と「Space_Atmospheric_04」を使いました。

他の音楽制作者が使ってない素材を使いたい方は必見です。

 

 

アンビエント音源はいいぞ

というわけで今回の紹介を終わりますが、アンビエント音源はいいぞ、という話をしてから終わろうかなと思います。

 

Ambientはジャンル柄、音源が曲の雰囲気を決定します。

ですので、Ambient制作では様々な音源を所持しておくことが大事になります。

サンプルパック、シンセプリセット、Kontakt音源など…。

美しいと思える音源を探す旅はとても楽しいものです。

他にも優れたアンビエント音源はたくさんあるので、是非探してみてください。

 

それでは、また~。