青零(セイレイ)

映像制作・作詞担当のアオねこ(aoneko)と、ボカロP・トラックメーカーのヒズミ零(cutable)の情報をまとめた公式ブログです

【楽曲解説】Fall Asleep

楽曲情報

cutable『Dream Diary Page.01』Track.01

Fall Asleep

 

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やっほ~cutableだよ~。

今回から、僕が先日リリースした「Dream Diary Page.01」の楽曲解説を1曲ずつ書いていきます。

9曲あるから9記事…大変だけど頑張ります。

 

ほとんど反則のアルバム

このアルバムは一般的な他のアルバムと大きく異なっている点があります。それは、

メロディーほとんど考えてない

ということです。

 

僕のブログを読んでる方なら分かると思いますが、僕はサンプルパックオタクです。

サンプルパックを知らない方に説明すると、サンプルパックとは、音楽で使う

  • ドラムの音
  • ベース、コード、メロディーの音
  • フォーリーなどの効果音、ライザーやドロップなどのエフェクト
  • 声ネタなどのボーカル

などの音素材をまとめたものです。

 

なので、例えば「テクノを作りたいなぁ」と思ったときは、テクノ向けのサンプルパックから、テクノ向けのキック、スネア、ハイハットなどの音を引っ張ってきて曲の中に取り入れます。

大抵の場合、サンプルパックから引っ張ってくるのは、毎回いちいち作るのがめんどくさいようなドラムやエフェクト、それから自力では用意するのが大変なフォーリーや声ネタなどがほとんどです。

ベースやコード、メロディーの素材は「それまで使ってしまうと音楽を作ってる感がない」「気に入ったメロディーがない」「メロディーをいじれないので展開が作れない」などの理由で使われることがめったにありません。

 

…なんですが、僕からしたら「せっかくサンプルパック買ったのに使わないの損じゃん!」という感じです。

もっと言えば「メロディー考えなくていいの楽じゃん!」とさえ思っています。

僕も内心「これ音楽作ったことになってんのかなぁ…」という不安はめちゃくちゃありますが、それでもサンプルパックを使う手が止められません。

 

これを聴いて「メロディー作ってないなら買うのやめるわ~」という人、いるんでしょうか…多分いると思いますが…。

ただ、いくつか言い訳をさせてください。サンプルパックを使うことを正当化する理由が5個くらいあります。

 

サンプルパックの使用はクオリティ向上に繋がる

サンプルパックはプロが作った「音楽のカケラ」のようなものです。

それを組み合わせて音楽を作れば、クオリティの高い曲が簡単に作れます。

クオリティが低いより、高い方が聴いていて気分が良いはずです。

 

コラージュ技法と考えれば問題ない

絵の分野にはコラージュという技法があります。既存の絵や紙などを切ってぺたぺた貼ることで絵を作るものです。

それが作品として認められる以上は、既存の音を切り貼りした楽曲も一応作品として認められてもいいんじゃないかなと思います。

 

そもそもサンプリングは音楽によくある手法

サンプリング、すなわち既存の音楽を切り貼りする行為は、音楽ではよく見受けられます。

Hip HopやVaporwaveなど、既存曲からのサンプリングを前提としているジャンルさえあります。

そう思うと、サンプルパックからサンプリングして何が悪いという気持ちになってきました。こっちは合法だし。

 

メロディーよりも大事な部分を作ってる

 Dream Diaryシリーズは作業中や睡眠導入向けに作られたアルバムです(8曲目は例外)。

なので、リラックスすることが主眼にあります。あくまで道具としての音楽です。

そのため、メロディーはそれほど重要じゃなくて、むしろ曲全体の構成とか、雰囲気を生み出す方が大事です。

 

ほとんど使われていないサンプルパックから持ってくればたいてい被らない

サンプルパックには「めちゃくちゃ使われてる素材」と「滅多に使われない素材」の2つがあります。

前者はVengenceなどですね。有名な人の曲を聴いてると「またこの声ネタかぁ~」とか「このエフェクトどっかで聴いたことあるな~」ということが往々にしてあります。

そういうのは流石に嫌になるかもしれませんが、世の中にはサンプルパックが大量に…それこそ数万単位で販売されています。無料のものを含めばもっと。

となると、その素材の海のなかから、輝くサンプルを拾ってきて曲に仕上げるというのは、悪いことじゃないように思います。

 

…と、言い訳してみます。ただ、あくまで言い訳なので「お前の言い分は気に食わん」という方もいるかも…そういう方は僕のアルバムを買わない方が吉です。

もちろん、全部の楽曲でメロディーをパクってきてるわけではなくて、ボカロ曲やスピードコアなど、メロディーのオリジナリティが大事な曲では自分でメロディーを考えています。

あと、Dream Diaryシリーズでも、1アルバムに1~2曲くらいはメロディーを1から考えたり、サンプルパックにあまり頼らず本気で作った曲を混ぜています。

 

Fall Asleepについて

言い訳は置いといて、楽曲の解説に入って行きますね。

Fall AsleepはDream Diary Page.01の最初に来る重要な曲であり、Dream Diaryシリーズ最初の記念すべき曲でもあります。

…が、めんどくさかったのでメロディーはサンプルパック任せです。まじでそのうちキレられるんじゃないかな。

でも、コード進行やベースなどは自分で付け足して、音楽として成り立つようにしています。

それから、曲の構成とかはちゃんと自分で考えてます。演出はちゃんと自分で考えて、cutableらしさが出るように頑張ったので…。

 

この曲は曲名の通り、眠りにつくシーンをイメージした曲となります。

このアルバムは僕の兄(ゆめにっき派生オタク)が監督を務めていまして、兄から「こんな感じで曲を作れオラァ」と僕に指図してきます。

このシリーズでは極力ストーリー性があるように曲を作っていて、最初の曲はやっぱり眠る場面を描きたいよね、ということでこの曲を作りました。

 

で、眠る前に聴きたい音楽と言ったら?という話になり、それならアンビエントとかピアノだよね、となったので、1曲目はピアノアンビエントに決まりました。

曲の最後に「Three...Two...One...」という声ネタが入っているのも、ゆめにっき派生によくある「ベッドに入って寝るまでのカウントダウン」をイメージしています。

 

ちなみにこのシリーズではBPMにもある程度意味を持たせています(普段は150とか185とか「キリが良けりゃいいや」という適当さです)。

この曲は「時間のゆったりした流れを表現したいな」と思ったので、秒針と同じ速度、60BPMにしました。

ただ、アンビエントはほとんどビート、すなわちドラムの音が鳴りません。

なので、BPM感を出すために秒針の音のようなものを入れています。

 

また、メロディー素材を最大限生かせるよう、素材のキーを変える、素材を逆再生してくっつけるなどして、オリジナリティを出そうと努めています。

書き忘れてましたが、曲の最後ではBPMを落として、ゆっくり眠りに落ちていく様子を演出しました。曲の最後でBPM落とすのはよくやってしまう。

 

使用した音源

本番!!!!!!コードとかベースは自分で落ち込んだのでシンセを使ってますよ~。

 

ベース 

ベースにはNative Instruments「Massive」を使いました。

 

使用したプリセットはPRODUCER LOOPS「Trap for NI Massive」から「BA Sine Sub」。

サブベースですね。チルいジャンルのベースにはサブベースを使うことが多いです。

チルいジャンルのベースはそれ自体を主張するのではなく、あくまで基音を鳴らして曲の土台とする役割として使うことの方が多い気がします。

なのでチルいジャンルではサブベースが大事になってきます。たぶん。

まぁ、この曲はTrapではないんですけどね…。Trapもサブベースを良く使うジャンルなので、相性は良かったです。

 

パッド 

パッドには初登場、Native Instruments「FM8」と「Absynth5」を使いました。

これらはそんなにシンセプリセットが出回っているシンセではないので、ファクトリープリセットを使いました(FM8は少しだけプリセットが販売されてます。それでもSerumなどと比べるとかなり少ないです)。

 

 

前者は「Lost Galaxy」という、サイン波をベースにしたプリセットを使用しました。

それに合わせてAbsynth5でもサイン波っぽいパッドを鳴らしたかったのですが、良い音がなかったので、デフォルトのサイン派をそのまま使いました。

 

ちなみにAbsynth5は何故か音がモノラルです。このままだと不自然なので、LEAPWING AUDIO「StageOne」というステレオイメージャー系のプラグインを使って、モノラル音源をステレオに変換しています。

割と自然に変換してくれるので便利です(やりすぎると流石に気持ち悪い音になります)。

その2つのシンセを左右にパンニングして音を重ねています。

 

あと、何故かXferのLFO Toolsを使って音にフィルターをかけていました。

おそらく、なんとなく音がのっぺりしていて、変化が欲しかったんだとおもいます。

LFO Toolsは疑似サイドチェインによるダッキングだけでなく、パンやフィルターをかけて音をうねらせることもできるのでまぁ便利です。

いや…でもサイン波って倍音無いし、フィルターじゃなくてボリュームにLFOかけるだけで良かったんじゃ…。

 

バイオリン 

それから、途中でコードをバイオリンで鳴らしていますが、これはKontakt音源のNative Instrumensts「Session Strings 2」です。こいつもThe Grandeurと同じくらいお馴染み。 

 

アルペジオ 

アルペジオというか、曲後半で鳴ってるキラキラした音にはSPECTRASONICS「Omnisphere 2」を使っています。

「Stuttering Misc Box」というプリセットです。オルゴールですね。

このプリセットはコードを打ち込むだけで、音を分解してピロピロ鳴らしてくれます。便利です。とにかく綺麗な音。

 

秒針の音 

それから、秒針の音はKontakt音源であるNative Instruments「Kinetic Metal」を使用しました。

この音源は「機械仕掛け」っぽい音が出せます。オルゴールとか、時計とか、そんな感じの金属音が揃ってます。便利です。

今回は「Plucked Idiophone」というプリセットを弄って時計の音っぽくしました。

左側の「METALS」が音程のない効果音的な音、右側の「WAVES」が音程のある音なので、左側のつまみだけを上げています。

 

ディレイとリバーブ 

あと、今回からディレイエフェクトとしてD16 Group「Repeater」、リバーブエフェクトとしてFabfilter「Pro-R」を使用しています。

アンビエント系ジャンルでディレイとリバーブは必須なので、奮発して良いプラグインを買いました。満足です。

クオリティの高いアンビエントを作りたい方は持っておくと良いと思います。

ディレイはSoundtoys「EchoBoy」でも良いかもしれません。僕は持ってませんが、どちらも素晴らしいプラグインです。

 

使用したサンプルパック

買おうね!!!!!

 

メロディー 

まずメロディーですが、SINGOMAKERS「Emotional Piano Themes Vol.6」を使用しました。

Vol.6があるということはVol.1~5もあるし、なんならVol.8までリリースされてます。

全部買いましょう。僕はまとめ買いしてすごーく気持ち良くなりました。まさに買い物依存症です。

 

このシリーズは「エモーショナル」を銘打ってますが、エモいというよりかは、「なんか映画に出てきそうな壮大で深刻な感じだなぁ」という雰囲気です。

日本的というより海外の映画っぽさが全面に出てるので使いどころはあるかもしれませんが、とても良い音です。

生演奏なんですかね?すごく生々しくて表現力の高いピアノ演奏です。

ちなみに僕は昔ピアノを10年くらい習っていたんですが、演奏の良し悪しについては一切分かんないです。

 

今回はこの中から「SEP6_Song_13_G#_140_BPM_Part_01」「SEP6_Song_13_G#_140_BPM_Part_02」「SEP6_Song_13_G#_140_BPM_Part_03」を使いました。

なのでこのサンプルパックを買ってこのサンプルを再生すれば「まんまやん」となります。

キーとかBPM、展開とかは変えてるんですけどね。ほぼ、まんまです。

 

 

エフェクト 

それから、トランジションエフェクトとしてBLACK OCTOPUS「Ambient Rimshots by AK」を使用しました。

これはAccept Musicでも使いましたし、チルアウト系のこのアルバムでも何度も使用しています。

それくらい汎用性が高いのですが、そのうちライザーとかドロップみたいな扱いになるかもしれない…。

 

声ネタ

トランジションエフェクトには他にも、LANIAKEA SOUNDS「Bliss Atmospheric Vocals Chapter Two」を使用しました。

2ということは1もあります。まとめて買いましょう。

このサンプルパックは、アンビエントに合いそうな「ほわ~ん」としたボーカル素材を多数収録してます。

アンビエント系の声ネタはこの2つでだいたい事足りるかもしれません。

今回は「LSB2_Vocal_Swell_02_100BPM_F#」を使いました。

 

曲の最後で「Three...Two...One...」という声ネタが入ってますが、これはBLACK OCTOPUS「Cristina Soto - Souls」から引っ張ってきました。

こいつは何故かSonicwireに置いてなくて、Spliceで買いました。

 

珍しいことに、この声ネタは単体でダウンロードするという、如何にもSpliceらしい買い方をしました。

普段Spliceは「Spliceにしか置いてないサンプルパックをまとめて買うだけの場所」と化してるんですが、このサンプルパックは「この声ネタ以外は流石にいらないかな」と思ったので単体でダウンロードしました。

 

あと、元の素材は「大人の女性」って感じの声だったんですが、ピッチを上げて可愛い女の子みたいな声にしました。

それから、リバーブをバカみたいに深くかけてドリーミーな感じにしました。

今プロジェクトを見返したところ、リバーブ感が気に食わなかったのか、リバーブのミックス量にわざわざオートメーションをかけてました。ご苦労様です。

 

雨音

そして、曲の後ろでうっすら雨の音を鳴らしているんですが、これはDIGITAL FELICITY「Lost without You Lo-fi Beat Kit」から引っ張ってきました。

このサンプルパックはLo-fi Beatを謳うLo-fi Hip Hop向けのサンプルパックですが、Lo-fi Hip Hop向けのドラムワンショットはなんとたったの8個しか収録していないという超鬼畜サンプルパックです。

全体的にこのレーベルの出してるサンプルパックは素材数が少ないので注意が必要です。でも、前に紹介したKawaii Future BassのSerumプリセットを出してるのもここなんですよね…。どうしたんだDIGITAL FELICITY

 

今でこそ雨音のサンプルパックは持っていますが、この当時は持っていなかったので、このサンプルパックのコンストラクションキットから持ってきました。

「3. Rain Sample [Digital Felicity]」を使用しています。いい感じの雨の音です。

雷の音も入っていて、そこまではいらないかな~と思ったので雨の部分だけ使いました。

 

あと、どうでもいいんですけど、レーベル名、ずっとDIGITAL「FACILITY(施設)」だと思い込んでました。 「FELICITY」は「幸福、至福」という意味だそうです。

 

これをあと8曲分やるのか…

めんどくさい!でも皆さんにサンプルパックの良さを知ってほしいので、頑張って書きます…。

っていうか、もうすぐボカロの新作出すんですよ。その記事も書かなきゃいけないから、早いうちに書かなければ…あぁ忙しい。

というわけでcutableでした、ばいばい~。