青零(セイレイ)

映像制作・作詞担当のアオねこ(aoneko)と、ボカロP・トラックメーカーのヒズミ零(cutable)の情報をまとめた公式ブログです

【楽曲解説】!!!DANGER ZONE!!!

楽曲情報

『The Raid of Tank Artillery』Track.06

!!!DANGER ZONE!!!

 

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というわけで新年あけましておめでとうございます!cutableです。

今年も自分の作った曲の解説記事をひたすら書き連ねていきます。

需要があるかは謎です。本当に謎です。

でもとりあえずまぁ、今年もよろしくお願いします。

 

『The Raid of Tank Artillery』って何?

今回僕が曲を提供させていただいたコンピレーションは、まいのりさん(@Min0rity__)主催の『The Raid of Tank Artillery』です。

こちらのアルバムは別名「打楽器限定コンピ」でして、その名の通り打楽器をメインとしたコンピレーションです。

おおまかなレギュレーションは、

  • メロディとコードの使用禁止
  • 打楽器を中心とした曲であること
  • キックは2種類以上使うこと
  • あとは全て自由

という感じだったと思います。

 

こちらのコンピレーションは2019年の6月頃から楽曲公募を行っていたみたいで、当初は8月末に公募が締め切られる予定でした。

なんですが、ありがたいことに締め切りが12月上旬まで延長されました。

締め切りが延長されてなかったら、僕はこのコンピレーションに参加していなかったと思います。

 

実は、このコンピレーションの存在を知ったのは、締め切り前日のお昼でした。

TwitterのTLに「コンピレーションに曲提出しました!」というツイートが流れてきたのがこのコンピレーションとの出会いです。そして、

「へぇ~、打楽器コンピレーションか~絶対面白いし僕も曲出すか~」

「…締め切り明日だ」

という地獄のような状況になりました。

 

なので、今回の曲は1~2日で完成させた手抜き曲です。

でも、メロディやコードを考える必要が無かったので、今回はまだ楽でした。

後日、「締め切りまで3~4日しかないのに、メロディとコードを考えなきゃいけない公募」に出した話をすることになると思います…。

 

曲の構成とか

曲のおおまかな流れについて解説しましょう。

 

イントロ

最初はアトモスフィリックなTechnoから始まります。BPMは125です。

こういうジャンルってなんて言うんですかね、Dub Techno?Ambient Techno?Atmospheric Techno?

まぁジャンルはよく分からないんですが、メロディが無くてチルい感じといえばDub Technoだったので、それをイメージして作りました。

 

破壊

その後、「It's time...to comeover...to the DARKSIDE」という声ネタを皮切りに、BPMが1000になります。

Extratoneです。本当にアホです。最高。

元から「打楽器メインか…Extratone作るしかないな」と思っていたので、こうなるのは必然でしたね。

むしろ、「キック2種類使わなきゃいけないし、Extratone以外に何かジャンルを混ぜた方がいいな」と思って考えたのがDub Techno地帯だったので…。

 

ちなみに、キックの合間にワブルベースのような、音程変化のする音が混じっていますが、あれも実はガバキックです。

ガバキックを4000BPMで鳴らしたものにピッチベンドをかけるとああいう音になります。

この技法については次の記事で詳しく解説することになると思うので、お楽しみに…。

 

ガバキックテックダンス?

その後、500BPMのパートを挟んだあと、ガバキックが鳴ったままBPMが125に戻ります。

ガバキックがどんどこ言い始めるパートです。どんどこどんどこ。

ここはTech Danceのキックを歪ませたような、あるいはSchranzを遅くしたようなパートです。

このパートはDiabarhaさんという海外のアーティストの曲を参考にしています。

以下の2曲が今回参考にした曲です。カッコいいので是非聴いてみてください。

 

 

ガバキックが鳴っているジャンルって少なくとも150BPM以上であることが多いので、150BPM以下なのにガバキックが鳴ってる曲って新鮮ですよね。

何かジャンル名とかあるんでしょうか。無いとしたら、Diabarhaさんにジャンルを提唱してもらいたいですね。

150BPM以下の曲でもガバキックを鳴らせるのはすごく便利なので、今後もこの技法はちょくちょく真似することになると思います。

 

そして再び500BPM地帯を挟んで、1000BPMのエクストラトーンに戻ります。

で、何事も無かったかのようにDub Technoに戻ります。シュールですね。

ちなみにここらへんは前半パートの繰り返しです。作り込んでる時間がなかったので丸々コピー&ペーストしました。

 

再破壊

Dub Techno地帯が終わるといきなり「ビーーーーーーーーーーーーーーーー」というビープ音が鳴り始めます。2000BPMのExtratoneです。

SpeedcoreとかExtratoneって、キックを複雑に置いてリズム感を楽しむのも良いんですが、反面BPMの感じが曖昧になるというデメリットもあります。

ここはExtratoneのヤバさを前面に出したかったので、あえてキックの配置はシンプルな4つ打ちにしています。

やっぱりこの「ビーーーーーーーーーーーーーーーー」というアホみたいなサウンドこそ、Extratoneという感じがして楽しいです。

 

それからBPMが4000に跳ね上がり、最終的には8000BPMになります。

もはや「ピーーーーーーーーーーーーー」という音になります。

ガバキックは連打しすぎると音程が感じられるようになるのですが、今回はC(ド)の音に近い感じになりましたね。だから何なのか。

ちなみに、主宰のまいのりさんが「今回のコンピの中でこの曲が一番耳ぶっ壊れそうだった」とおっしゃっていました。

全てを破壊するつもりでこの曲を作ったので、目標を達成できて嬉しい限りです。

 

そして再び前半の丸コピ地帯を挟み、最後のパートに突入します。

いくら時間がないとはいえ、同じパート繰り返しばかりでは飽きてしまうため、最後は違う展開にしました。

最後のパートでは2000~8000BPMのビープ音地帯とは対照的に、キックを複雑に配置しています。

BPM感は曖昧になりますが、その分リズミカルで楽しくなります。キックを刻むのも、刻まないのもSpeedcoreの醍醐味です。

ちなみに、ガバキックを所々消すことで、音をわざと途切れさせています。

Extratoneを聴きすぎて耳がぶっ壊れるのをイメージしました。

 

余談 

曲の構成についてはこんな感じでしょうか。

余談ですが、DAWのプロジェクト設定上でのBPMは500でした。

FL Studioの上限BPMは522なので、結構ギリギリです。

あと、曲名の「!!!DANGER ZONE!!!」は、ExtratoneゾーンがDub Technoゾーンに比べてあまりにも凶暴で危険だったのでそう名付けました。安直です。

 

そういえば、今回の曲は音圧がやや低めになっています。

これはDub Techno地帯のダイナミクスを生かすためにあえて音圧を下げて…

…というのは大嘘で、単純に僕のミックスとマスタリングが下手なだけです。

今プロジェクトファイルを見たら、ほとんどコンプレッサーを使っていませんでした。

反省。

 

使用した音源とサンプルパック

ガバキック

メロディ、コード一切禁止なので、音程の鳴るシンセは一切使っていません。

ガバキックにSonic Academy「Kick 2」を使用した以外、音源は一切使っていません。ある意味すごいね。

その代わり、曲の大部分がサンプルパックで構成されています。ガバキック以外は全てサンプルパックの音です。

 

ドラム

まず、Dub Techno地帯のキックですが、これにはARTISAN AUDIO「Dub Techno 2」を使用しています。

Dub Technoを作るなら、やっぱりDub Techno向けのサンプルパックからキックを持ってくるのが良いですね。

「AA_12_Bassdrum_120」を使用しました。

 

ハイハットもARTISAN AUDIO「Dub Techno」を使用しています。

使ったのは「DT_Hat_09」。

どっちも面白いサンプルパックなので買いましょう(あとジャケットがオシャレ)。

 

フィル

次にフィルですが、これにはHY2ROGEN「Essential Fills Vol.7」を使用しました。

使用した素材は「psef7_edm_fill_11_128bpm」です。

お察しの良い方なら分かると思いますが、Vol.1~7まであるロングセラーシリーズです。

これを買っておけばフィルで困ることがだいぶ減るので、全部買っておきましょう。

え?最新版だけでいい?そんなケチ臭いこと言わずに全部大人買いしましょう。

いつか使うので。いつか…。多分…。

 

テクスチャー

そして、今回大活躍したのがテクスチャ~パッド系のサンプルパックです。

ガバキックを鳴らしてるだけだと何の面白みもないので、バックを埋めるアトモスフィリックな音が必要でした。

今回使用したサンプルパックはBLACK OCTOPUS「Ominiscape Future」と「Ominiscape Spooky」です。

 

前者からはまろやかでアトモスフィリックな「DiamaudixAudio_Omniscape_Future_Abyssal Voyage_10」というサンプルを、後者からは不穏でホラーっぽい「DiamaudixAudio_Omniscape_Spooky_Bizarre_13」というサンプルを引っ張ってきました。

前者はDub Techno地帯で、後者はExtratone地帯で鳴らしており、後者にはW. A. ProductionのScreamoというディストーションをかけています。

こうすることで音が歪んで汚くなり、よりホラーで不穏な感じが増すうえ、ガバキックと馴染みやすくなります。多分。

 

ちなみにBLACK OCTOPUSは他にも「Ominiscape Bass」「Ominiscape Madness」「Ominiscape Shimmering」「Ominiscape Unpitched」というサンプルパックを出しています。

これらOmniscapeシリーズは、アンビエント系のジャンルを作るときにすごく便利なので、アンビエント系のジャンルを作りたい人は全部買っておきましょう。

あと、僕みたいにディストーションをかけると不穏な雰囲気を出しやすいので、ノイジーな楽曲を作りたい方も是非。

バンドル版もあるのでそれで…全部買おうね。


グリッチ

そして僕が一番お勧めしたいのがTEMPORAL GEOMETRYの「Intelligent Machines / Minimal Glitches」です。

これはどういうサンプルパックかというと、グリッチ音で出来たパーカッションっぽいループ素材を100個収録したサンプルパックです。

これがね、めちゃくちゃ良いんです。

4つ打ちキックの上にこの素材を乗っけるだけで「それっぽく」なります。

 

あくまでグリッチ系の音なのでジャンルは選びますが、機械的な雰囲気が似合うジャンルではすさまじい威力を発揮します。

あと、グリッチ系の音は自分で作るのが至極面倒なので、サンプルパックとして販売されているのはとてもありがたいことです。

今回は「IntelligentMachines120bpm019」を選びました。

 

似たようなサンプルパックに「Iron Claw / Beats, Glitches, Bass & Lead」「Nanowaves Micro-Granular Processing」などがあるので、こちらもお勧めです。

これまで半ば冗談で「全部買いましょう」とか書いてましたが、これらのサンプルパックは本当にお勧めです。

とても汎用性が高いサンプルパックなので、今では多くの曲にこのサンプルパックを使っています。

デモ曲を聴いて気になった方は買ってみてください。

 

TEMPORAL GEOMETRYはグリッチ系のサンプルパックやアンビエント系のサンプルパックを出しているので、個人的にすごく好きなレーベルです。

ただ、「これ使い道あるのか…?」っていうサンプルパックがあったり、サンプルパックの名前が異様に長くてファイル名がまどろっこしくなったり、サンプルパックのジャケットがあんまり…だったりするのが玉に瑕です(最近のジャケットはオシャレで好きです)。

それでもすごく良いサンプルパックをリリースしている隠れた名レーベルなので、是非ともチェックしてみてください。

 

エフェクト

ライザーとドロップにはSOUNDBOX「Impact, Risers & Drops 6」を使用しています。

こいつは毎回使う以上、毎回記事に書かなきゃいけないのでもう除外したい…。

でもそれだけ汎用性が高いのも事実なので一応紹介しておきます。

前者は「SB_IR&D_6_128_RISES_001」、後者は「SB_IR&D_6_128_DROP_014」。

Vol.1~7まであるので全部買ってください。

 

声ネタ 

そして一番気になるであろう声ネタの紹介です。

この声ネタはSAMPLE MAGICの「Vocal Shout 2」というサンプルパックに収録されています。

「vs2_vox120_darkside」というサンプルです。

SAMPLE MAGICのVocal Shoutシリーズは1~3までリリースされており、至る所で使われている人気の高い声ネタ専門サンプルパックです。

 

ちなみに今回使った「It's time...to comeover...to the darkside」という声ネタも、USAOさんの『TAPIOCA』を始めとして、色々な曲で使われています。

有名な声ネタなので一度使ってみたかったんですよね。

あと、Extratone地帯が♰ダークサイド♰感あったのでこの声ネタを使いました。

正直、使い回された声ネタはこういうところでしか使うチャンスが無い…。

 

ただ、残念なことに、このVocal Shoutシリーズは廃盤になっており、Sonicwireで購入することができなくなっています。

というより、SonicwireからSAMPLE MAGICのサンプルパックが全部消えました。闇が深い…。

ただSpliceやSAMPLE MAGICの公式サイトからは買えるはずなので、欲しい方は手に入れておきましょう。

いつ廃盤になるか分からないので…。

 

追記 「Vocal Shout 3」が消息不明になりました…。やっぱり古いサンプルパックは消えることがあるみたいです。

 

終わりに

というわけで、2日で作った曲の解説が終わりました。

2日で作った曲でも7000文字くらいの記事が書けるとなると、1か月くらいかけて作った曲の解説記事は一体何文字になるんだろう…。

まぁ、それはそのとき考えましょう。

 

あ、大事なことを話していませんでしたね。

『The Raid of Tank Artillery』には僕以外にもたくさんの方が参加していて、皆さんとてもクオリティの高い曲を出していらっしゃいます。

ですので、是非ともこのコンピレーションをダウンロードして全曲聴いてみてください。

そういえば僕の知り合いの方もこのアルバムに出してましたね。

知り合いと同じコンピレーションに収録されるととても嬉しいです。

 

というわけでcutableでした。さようなら~。