青零(セイレイ)

映像制作・作詞担当のアオねこ(aoneko)と、ボカロP・トラックメーカーのヒズミ零(cutable)の情報をまとめた公式ブログです

【楽曲解説】パペッタ feat.flower

楽曲情報

ボーカロイドオリジナル曲『パペッタ』

 

楽曲の視聴はこちら

 

オフボーカル・歌詞はこちら

 

 

ヒズミ零初のオリジナルボカロ曲

どうもこんにちは。ヒズミ零です。

「エバ(工事中Remix)」がきっかけとなり、名義を「工事現場P」から「ヒズミ零」に変えたということは以前にもお話した通りです。

ざっくりとその理由をまとめると「柊キライさんにフォローされてしまったら、もう生半可な作品は作っていられないな…」という感じの理由です。

 

そうやって心機一転し、本腰を入れて作ったオリジナル曲としては初となる作品…それがこの『パペッタ』です。

過去の作品が手抜きだったという訳ではありませんが、音楽理論、作編曲、音作り、作詞など、以前よりかなり気を配るようになりました。

その甲斐あってか、「工事現場P」時代のオリジナル曲よりも、より多くの人に見ていただけて、それだけでなく歌ってくださる方も見られるようになりました。うれしい。

 

今回から大きく変わったのは歌詞と世界観です。

「工事現場P」時代には、僕が適当に思い付いた言葉をそのまま歌詞にしていました。

世界観も意味不明です。スピードコアに対するラブソングってなんですの?

チョコミントとタピオカとバナナジュース混ぜるなんて正気ですか?

…といったように、それはまぁとにかく意味不明な世界観でした。奇作、怪作。

 

というわけで、今作から、歌詞と世界観の考案は兄のアオねこに任せることにしました。

僕の兄は大学で成績優秀、特にレポートや文章記述に強く、レポート添削のアルバイトもやっていたみたいです。

本人曰く「文章の構成を考えるのが少し得意なだけで、語彙力と表現力はまだまだ不足している」らしいですが、僕よりは1000倍マシです。

 

なので、今作から歌詞や世界観はお兄ちゃんに丸投げ。

もちろん、僕が少しアイデアを出したり、要望を出したりすることもあります。

それでも、お兄ちゃんは日々考えたことをメモして、歌詞や世界観のアイデアを日々練っているみたいです。

今作から「それっぽい」難解な歌詞になっているのはそのためです。

 

歌詞の解釈

さて、その暗号じみた歌詞の「解釈」を公開するかどうかは、兄と一緒に話し合って結構悩みました。

僕たちとしては、伝えたいことがあるからこそ、言葉にしてボカロ曲にしているわけです。だから、意味が伝わらないと意味がない…。

でも、作者が意味を安易に教えてしまうと、リスナーさんが想像を膨らませる余地が無くなってしまう…。それでは面白くない…。

 

こうした葛藤でかなり悩んだのですが…最終的に、歌詞の解釈を公開することにしました。

というのも「作詞家の意図が唯一解の解釈である」とは全く限らないからです。

そこに、異なる解釈をぶつけることもできますし、そちらの方が説得力を持つことさえあります。

歌詞の解釈を作詞家が公開したって、そんな解釈はいくらでもひっくり返せます。

そう、曲の意味を決めるのは作詞家ではなくリスナーなんです。

 

とはいえ、伝えたいことがあるというのも事実。

だから、「作詞家がイメージしていた正解の解釈」なんかではなく、あくまで「数多く存在する解釈のうちの1つの可能性」を提示する、というだけのことです。

一応、解釈について次の項で書きますが、ネタバレになる部分は白字にして伏せています。

読みたい方だけ、反転させて読んでください。読みたくない方は、見なかったことにしてこのことは忘れてください。

 

『パペッタ』の解釈

※以下、反転してください。あ、この項目は兄に書かせました。

ほんと、人遣いの荒い弟…。

【世界観】

曲名の「パペッタ」はパペッター=Puppeteer=人形師・操り師という意味です。操り人形といえば、教師や上司からの命令で受動的・消極的に動いている様子を揶揄するもの、というイメージがありますが、本作ではやや意味合いが異なります。

 

本作でいうパペッタ=人形師とは「自分の脳」です。人間は脳からの指令で動いている生き物であり、脳からの指令は基本的に無視できません。そのため、人間は自分の脳に操られていると表現してもあながち間違いでは無いでしょう。

 

脳の指令に逆らうことは基本的にできません。例えば、怒りを覚えたら、脳から「怒れ」という指令が下りてきます。自分で「怒るのを抑えろ」と命じても、脳が「怒れ」と命じれば、我慢できずに怒ってしまうのです。

 

自分の脳に、自分の行動を操られていて、逆らうことができない。自分の行動で周りに迷惑をかけたり、自分自身を苦しめたりしているのに、その行動をやめることができない。そうした怒り、苦しみ、悲しさを表現したのが本作です。

 

なお、主人公の名前は「カイラ」にしました。「傀儡(カイライ)」が語源です。

 

【歌詞の意味】

エンヴィー零して凍てつく 上手くリューズ回せずに
(口を滑らせ嫉妬の言葉を漏らしてしまい、場が凍り付く。リューズを回して時間を調節するように、自分の心を制御することが上手くできない)

 

フラスト暴れて壊す またヒューズが飛ぶのさ
(フラストレーション、欲求不満の感情が暴走して物に当たる。ヒューズが飛ぶように、すぐに怒りが爆発してしまう)

 

そのくせ独りは嫌で エクスキューズ欲しがって
(そんな身勝手で横暴な振る舞いをしているけれど、孤独になるのは嫌だ。こんなわたしであってもどうか許してほしい)

 

それでも懲りずに呪って なおチューズし違えるさ
(そうやって許してほしいと思っているくせに、懲りずにまた他人を妬んだり恨んだりする。何度反省しても行動の選択を誤ってしまう)

 

「ちょっとひとつ訊いて良いですか?」
(わたしの感情を司る脳に聞きたいことがある)

 

「あなたは何をしているの?」
(わたしの感情が暴走しないようにちゃんと制御してよ、あなたいったい何をしてるの?)

 

「そう、そこの君。そうだよ、嗤うあなたへ!」
(わたしの脳に言ってるんだよ、あなた、わたしのことを馬鹿にしてるの?)

 

ズタズタにリズムを刻んで
(わたしに馬鹿げた振る舞いをさせて)

 

バラバラのココロを揺らして
(わたしの傷ついた心をいたずらに揺さぶって)

 

ガタガタとカラダを震わせ
(怒りや苦しみで身体を震え強張らせて)

 

「ねぇパペッタ、何がしたいの?」
(わたしの脳は何をしようとしているの?)

 

わたしの問い掛けを
(わたしが自分の脳を制御しようとしても)

 

無視して ただ吊り糸を手繰るのさ
(脳は言うことを聞いてくれなくて、ただわたしのことを一方的に操ってくる)

 

「ねぇ、ねぇ、聞いているの?ねぇってば」
(どうしてわたしの脳は言うことを聞かないの?)

 

心的外傷癒えず 薬漬けになって
(横暴な生活をしているものだから、何度も酷い目に遭ってきて、トラウマになっている。トラウマを治療するため、薬漬けになっている)

 

侵入思考蝕まれ 自傷繰り返すのさ
(ふいに非道徳的で嫌な妄想をしてしまう。その度に自己嫌悪して、我慢できずに自傷行為に走ってしまう)

 

「ちょっとひとつ言って良いですか?」
(わたしの脳に対して文句があるの)

 

「あなた手先が不器用ね」
(わたしの感情を制御するのが本当にヘタクソね)

 

「正しい方へ操ってほしいんだよ」
(わたしの感情を暴走させずにちゃんと制御してよ)

 

今日は あいつのこと謗って
(やめたいなと思いながらも、今日は他人の陰口を叩いた)

 

明日も そいつを殴って
(明日には、怒りに我慢ならず他人を殴ってしまうんだろうな)

 

一生 こいつを怒鳴って
(きっと、一生他人に罵声を浴びせ続ける生活を送るんだろうな)

 

「ねぇパペッタ、邪魔しないでよ」
(わたしの脳に言いたい、わたしの生活を邪魔しないでほしい)

 

逃れようと藻掻けど
(こんな自堕落な生活から逃れようと必死になっているけれど)

 

木の十字架がわたしを磔る
(脳の指令からはどうしても逃げられず、縛られている)

 

「ねぇ、ねぇ、ふざけないで?ねぇってば」
(もういい加減にしてほしい、わたしの言うことを聞いてほしい)

 

あなたがわたしの声を聞いて
(わたしの脳が)

 

わたしの顔を見つめながら
(わたしの「逃げたい」という思いを受け入れて)

 

わたしに差し出してきたのは
(わたしに提案してきたのは)

 

朽ちて錆びた一丁のハサミだった
(脳の神経を裁ち切れ、死んでしまえ、ということだった)

 

ズタズタにリズムを刻んで
(わたしに馬鹿げた振る舞いをさせるのも)

 

バラバラのココロを揺らして
(わたしの傷ついた心をいたずらに揺さぶるのも)

 

ガタガタとカラダを震わせ
(怒りや苦しみで身体を震え強張らせるのも)

 

「ねぇパペッタ、もう辞めようよ」
(そんな馬鹿げた人生なんてやめてしまおうよ)

 

操るのは良いけど
(わたしのことを操るのは別に良いからさ)

 

せめて正しく歩かせてほしいんだ
(せめて他人に迷惑のかからないように生きさせてほしいんだ)

 

「ほら、ほら、聞いてないな」
(そう願ってもわたしの脳は言うことを聞かない。また他人を傷つけてしまう)

 

もう嫌だ
(こんな人生はもう嫌だ)

 

今日も あいつを謗って
(他人の陰口を叩くのも)

 

明日も そいつを殴って
(怒りに我慢ならず他人を殴ってしまうのも)

 

一生 こいつを怒鳴って
(他人に罵声を浴びせるのも)

 

「ねぇパペッタ、終わりにしようか」
(もう終わりにしよう、死んでしまえば脳の支配から解放される)

 

774(名無し)のあなたから
(つかみどころない正体不明な脳という存在)

 

朽ちたハサミを無理矢理引っ手繰る
(その脳で考えた最後の思考は、死ねば皆が救われるというものだった)

 

ひとつ ふたつ 糸が弾け さよなら
(迷惑をかけた皆、ごめんなさい、さようなら。役立たずの脳とはお別れしよう)

 

【言葉選びの意図】

1番Aメロの「リューズ」「ヒューズ」「エクスキューズ」「チューズ」というやや不自然な言葉を選んだのは、語感を合わせるためです。ちょっと無理があるかな~とは思ったんですが、良い感じに語感のある言葉で全て表現できそうだったので、採用しました。

 

ちなみに「フラスト」はフラストレーションの略です。日本語訳である「欲求不満」も字数的に入らず、その前の歌詞が「エンヴィー」という外来語なので、強引ですが「フラスト」と略しました。

 

Bメロで会話風の歌詞にしたのは、Aメロと変化をつけるため、そしてリスナーさんに印象付けるためです。それまでは叙述っぽい歌詞だったので、台詞っぽい感じにしてアクセントにしています。

 

また、歌詞に「!」や「?」を使ってみたかったということもあります。いずれもシンプルな記号ですが、上手く使えばインパクトを与えられると思って使いました。

 

サビの歌詞は語感を合わせて、似た言葉を繰り返し、印象に残るよう心がけています。「ズタズタ」「バラバラ」「ガタガタ」という擬音・擬態語の繰り返しは分かりやすいと思います。「あいつ」「そいつ」「こいつ」といったこそあど言葉も繰り返しの1つです。

 

それだけでなく「刻んで」「揺らして」「震わせ」「謗って」「殴って」「怒鳴って」は全て語尾の母音が「e」に揃っています。…というか「震わせ」以外は全て最後の文字が「て」になっているので、そうなるのは当然ですが…。そして、サビの台詞歌詞をだんだん変化させていくことで、物語を進めていきます。

 

ちなみに、当て字を3つほど使いました。

 

第1に「磔る(はりつける)」。「磔」という字は「はりつけ」と読みますが、これは名詞。「磔る」という動詞的な用法は聞いたことがありません。なので、文法としては変なんですが、面白い表現なので採用しました。

 

第2に文字化け部分。piaproを見ていただければわかりますが、ラスサビ後半で歌詞が文字化けします。とはいえ、それは映像の演出上そうしたかっただけなので、当て字ということにしておきました。

 

第3に「774(名無し)」。ヒズミは曲のテンポを表すBPMという数字に語呂合わせで何かしら意味を持たせるのが好きらしくて、今回はこの数字を選ぶことにしました。それゆえ、「語呂合わせに使ったキーワード」と「曲のテンポ=曲のジャンルが絞られてくる」の兼ね合いを相談して決めるのは、なかなか骨の折れる作業です。

 

【イラストの話】

イラストはいつもお世話になっているTMKさん(@tmk_422)にお願いしています。

ヒズミ零名義では初のオリジナル曲なので、TMKさんと知り合った経緯についても改めて書いておきますね。

 

これもどこかで書いたと思うんですが、TMKさんにイラストを依頼するまでに、2人のイラストレーターさんにコンタクトを取っていたという経緯があります。

お1方は多忙のため断念、もう1方もイラストの方向性の違いにより断念…という過去がありました。

ただ、前者のとある有名な絵師さんから「piaproで絵師さんを探してみてはいかがでしょうか?」というアドバイスをいただき、それからpiaproで絵師さん探しをスタートしたというわけです。

 

そんななかTMKさんの存在を知ります。

僕「TMKさんか~…こんな神絵師さんに頼めたら最高なんだけどなぁ~…無理だろうなぁ~…」

というわけで自信が持てず、他の絵師さんにコンタクト。方向性の違いにより断念。

となり、残るはやはりTMKさんしか…となり、恐る恐るコンタクトを取ってみたら…

TMKさん「良いですよ!是非!」

と快諾してくださいました。

 

もう夢かと思いましたね。なんせ、僕の処女作はあの怪作『スピード×コア』ですからね。

こんな変わった曲でも依頼を受けてくださるなんて…と、本当に感謝の気持ちしかありません。

というわけで、かれこれ1年以上、ずっとイラストをお願いしております。

 

実はもう1人だけ好きな絵師さんがいて、今作はその人に頼んでみようかなと思ったのですが、その方も多忙で叶わず。

今思えば、やっぱり僕はTMKさんのイラストがとても好きです。だから、今後オリジナル曲はほぼ100%TMKさんとチームを組んでやっていくことになると思います。

余談ですが、aonekoのA、cutableのC、tmkのTを並べ替えるとCATになります。チームCATです。偶然ってすごい。

 

ちなみに、『パペッタ』のイラスト制作裏話は、TMKさんのpixiv fanboxで読むことができます(確か¥300でした)。

僕も自分の曲のイラストが描かれる過程を個人的に知りたかったので、即支援しました。

僕でも「へぇ~そうだったのか~!」と思うことが結構あり、読んでいてすごく楽しかったです。

皆さんも是非読んでみてください。

 

 

Speedcoreというジャンル

ヒズミ零名義では初のオリジナル曲となるので、改めてこの曲のジャンルについて解説しておきます。

ジャンルが「ロック」だと間違われたことがあるので、全然違いますよ~と改めて説明しておこうと思います。

 

僕は基本的に「Speedcore」というジャンルのボカロ曲を作っています。

厳密にはサビだけSpeedcoreで、AメロやBメロのジャンルは曲ごとに違うのですが…。

全ての曲に共通するのはSpeedcoreです。

 

Speedcoreはその名の通り、テンポがめちゃくちゃ速い…ただ、それだけのジャンルです。

パペッタのサビ後半を聴いていただければ分かりますが、ドラムが「ドンドンドンドンwwwドドドドドドドドドwwwデケデケデケデケデケデケデケデケwww」と高速で暴れ狂っているのが分かると思います。

ラスサビ後半とか速すぎますね。えげつない。

 

もう少し細かいことを言うと、ドラムのなかでもバズドラム(キック)という音にディストーションをかけて音を歪ませた「ガバキック」を使う、ということが一応Speedcoreの必要条件です。

こうしたガバキックを用いるジャンルを総称して「ガバ(Gabba)」と呼ぶことがあります。

キックの音色によってジャンルが区別されることもあるくらい、ガバキックはガバ系ジャンルにとって命ともいえる重要な要素です。

 

↓こんな感じの汚い音がガバキックです。海外では「ハードコアキック」と呼ばれます。「ガバキック」は和製英語みたいなものです。

 

キックは歪ませるとリリースが伸びます(音が小さくなっていく時間が伸びる)。

そのため「どんっ、どんっ」という音が「べー、べー」という長い音になります。

この伸びた音の部分がベースの役割を果たすので、ガバ系ジャンルではベースを入れないことが多々あります。ベースが無いというのは結構珍しいジャンルです。

 

このガバキックを連打しまくるのがSpeedcoreというジャンルです。

ガバキックは音が歪んでいるため、耳障りなノイズが混じっています。

それゆえ、連打すると工事現場の音とかマシンガンの音とかに聴こえます(旧名の工事現場Pはこれ由来です)。

本来のSpeedcoreでは、このガバキックの連打の上に、さらにノイズや叫び声などを載せて地獄みたいな雰囲気にしていくことが多いんですが…。

 

↓地獄絵図。でもカッコイイ。僕は大好きです。

 

それだとボカロ曲にならないので、ガバキック連打の上にはメロディーのあるボーカルを乗せて、なんとか歌モノの曲にしています。

コード進行も王道のものを使い、ギリギリ一般受けするラインを狙っています(ちなみに僕はサビで必ず456系の進行を使います。エモーショナルで大好きな進行なので…)。

一言で言えば「サビでなんかめちゃくちゃ速くなる」というのが僕の作風です。

 

サビ以外のジャンル

サビはSpeedcoreですが、AメロやBメロなどのジャンルは曲ごとに違うものを選んでいます。

今回はHitech PsyTranceというジャンルを選びました。

 

もともとPsyTranceというジャンルがあって、そのテンポを上げたものがHitech PsyTranceと呼ばれます。

↓でででででで…と高速で鳴るベース(低音)が特徴的です。

youtu.be

 

PsyTranceとボカロ曲を組み合わせる試みは、少ないながらもそこそこあります。

↓VocaloidとPsyTranceで検索すると10件くらい曲がヒットします。ちゃっかりパペッタも入ってます。

 

ただ、全体的にPsyTrance本来の性質に忠実で、ポピュラー音楽に寄せようとする傾向がありません。

実のところ、PsyTranceをポピュラー化させたものは「Commercial Psy」と呼ばれることがあり「PsyTranceのパチモン」「PsyTranceにわか」「資本主義・商業主義の犬」みたいに思われている節が少しあります。

その影響もあるのか、PsyTranceの特徴である曲尺の長さ、無機質さ、サイケデリックなアートワークなどの要素を妥協せず残した曲がほとんどを占めています。

 

でも、僕は「Commercial Psy?うるせ~~!!知らね~~!! FINAL FANT

                                                                                                           ASY」

というスタンスなので、PsyTranceを一般受けするように魔改造しました。

曲尺は完全にボカロ曲だし、メロディもコードもPsyTranceらしからぬものだし、動画のサイケ要素もほぼ0です。

PsyTranceガチ勢の方々からそのうち抹殺されるかもしれませんが、後悔はしてません。

 

僕は基本的に他人の真似事をするのが好きでない(例外あり)ので、既に数万~数十万曲は作られているであろう通常のPsyTranceではなく、風変わりなことをしてやろうと目論んだというわけです。

実際、PsyTrance(しかもHitech)をポピュラー化して、さらにSpeedcoreも混ぜて、さらにボーカルを入れ、しかもそれをボカロに歌わせるという意味不明なことをやったのは、ほぼ間違いなく世界中で僕だけです。

 

普通のPsyTranceを作っていたのでは「音作りが甘いね」「ミックスがポンコツ」と言われて、作編曲の上手いコンポーザーが贔屓されるのが目に見えてますが、そもそも普通じゃないPsyTranceを作ってしまえば、質ではなくアイデア勝負になるので、そういう詰めの甘さなんて多少はどうでもよくなります。

 

僕はPsyTranceの専門家ではなく、あくまでSpeedcoreとボカロを混ぜる溶媒としてPsyTranceを使っただけなので、そのあたりは優しい目で見て欲しいな…と思います。

僕は単に、これまで誰もやってこなかったことに挑戦してみよう、と思っているだけです。

 

…といった事情で、僕はボカロと「Speedcore+その他のジャンル」を混ぜるというのを得意技として使っています。

かなり奇怪な作風ですが、それでも意外と好評なので、今後もずっとこの作風を貫くつもりです。

もう一度言いますが、Speedcoreです!ロックじゃないよ!ロックはギターやドラムに疎いので作れません…。

 

使用した音源

ここから先はDTMの話になります。音楽をやってる人にしか伝わらないコアな話になるので、興味がある人だけ読んでください。

 

ガバキック

ガバキックの制作にはいつもSonic Academy「Kick 2」を使用しています。

こちらはキック制作専用シンセで、キックのADSRやトランジェント、ピッチ上下などを細かく弄ることができます。高機能の割には操作が直感的で、とても扱いやすいシンセです。

シンセプリセットに頼りっきりの僕でも、1から音作りができるくらい簡単な操作性。

 

ただし、通常のキックにはサンプルパックの音を使っています(音作りが面倒だし、折角持ってるなら使いたいので)。

その代わり、ガバキックはSpeedcoreの命なので、1から音作りして、アタックやリリース、音程を調整して、そこにディストーションをかけまくって作っています。

 

ベース

ベースには、イントロやアウトロで使ったサブベース系の音と、AメロやBメロで使ったサイケベース系の音、間奏のニューロベース系の音、計3つを使っています。

このうち、シンセを使ったのはサブベースとニューロベースです。

サイケベースは訳あってサンプルパックを使っています。

 

まず、サブベースには、サブベース専用シンセDiginoiz「Subdivine」を使いました。

厳密にはシンセではなくサンプラー…?らしく、音作りの幅は少し狭いです。

ただ、プリセットとして100種類くらいサブベースの音が入っています。これさえあれば、サブベースで困ることはあまり無いと思います。

 

ただし、やはりシンセでなくサンプラーのような立ち位置だからなのか、ロングノーツを打つと音が途中で消えます。

なので「60秒間ずっとサブベースを鳴らしたいんだ!」という場合はシンセを使う必要があります。

 

今回は「Digital 25.Air Flattener」というプリセットを使いました。かなりシンプルで癖のない、オーソドックスな音です。

 

次にニューロベースですが、こちらにはNative Instruments「FM8」を使用しています。Kompleteに入っているやつです。

 

このシンセは音作りが異様に難しいので、完全にシンセプリセット頼りです。

今回はLOOPMASTERS「Deadly Drum & Bass FM8 Presets」というシンセプリセットを使いました。

LOOPMASTERSのシンセプリセットはPatchworxシリーズと呼ばれていて、このシンセプリセットは108番目の製品でした。全部コレクションするのが僕の夢です。ジャケットもオシャレだし。

 

今回はその中から「Bass_D&B_Rebel_NS」というプリセットを選んでいます。

このシンセプリセットの中で一番ニューロベースっぽい音だったので…。

 

パッド

AメロやBメロを作ったあと、何か音に隙間があって物足りない感じがしたので、パッドの音を入れています。

今回、音に厚みを出すため、別のシンセを使ってパッドを2つ重ねています。1つはXfer「Serum」 、もう1つはImage Line「Toxic Biohazard」です。

後者はFL Studio搭載のシンセですが、課金しないと使わせてもらえないシンセです。

でも、vstで販売されているので、FL以外のDAWでも使えます。

 

Serumの音作りはそこそこ分かっているんですが、音作りは面倒だし、シンセプリセットを買い漁るのが趣味なので、どのシンセにおいてもシンセプリセットを買って使うことがほとんどです。

今回はPRODUCTION MASTER「Ambient Keys」というシンセプリセットを使いました。

その中から「PD Underwater」というプリセットを選んでいます。かなり柔らかい、好みのパッド音です。

 

Serumのようなメジャーシンセでは、標準搭載のプリセット(ファクトリープリセット)を使っていると他のクリエイターと音が被る可能性が極めて高いので、サードパーティ製のシンセプリセットを使っています。

一方で、Toxic Biohazrdのようなマイナーシンセでは、ファクトリープリセットでも音が被りにくい(というかサードパーティー製のシンセプリセットの販売が少ない)ので、ファクトリープリセットを使うことが多いです。

 

ただ、Toxic BiohazrdにはImage Line公式から追加プリセットが販売されているので、それも導入しています。

何故かファクトリープリセットと混ざってしまって、ファクトリープリセットなのかそうじゃないのか、判別できなくなってしまいました。

 

今回は「Vintage Vox ToTc」というプリセットを選んでいます。Serumよりもさらに静かな音で、よーく聴かないと聴こえないくらいの音です。

今回使ったプリセット…残念ながらファクトリーなのか否か不明です。多分ファクトリー。

AメロではToxic Biohazrdの超影薄いパッド、BメロではそれプラスSerumの柔らかいパッドで音の空間を埋めています。サビでも空間補強でパッドを入れています。

 

コード

「コードってなんだよ!パッドもコードじゃねーか!」と思う方もいるかと思います。

僕の言うコードというのは、スーパーソウ系のパッドのことを指しています。

パッドというのは倍音が少なくて柔らかいイメージがあるので、パッド/コードと勝手に呼び分けている…というわけです。

 

サビではスーパーソウ系のコードを鳴らして一気に盛り上げています。

ガバキック+スパソコード+アルペジオが僕の常套手段です。いっつもこのやり方。

 

この音にもSerumを使いました。

今回使ったプリセットはNEW LOOPS「Serum Pads」です。もう名前の時点でパッドだって言われてる。

今回は「Queen」というプリセットを選びました。こいつで456進行を鳴らすと、何故かなんとも言えない哀愁が漂います。

少し細い音なので、オクターブ上下に音を足して広がりを持たせました。

 

アルペジオ/オルゴール

「ガバキック+スパソコード+アルペジオは常套手段」と先程も書きましたが、そのアルペジオにはImage Line「Harmless」というシンセを使いました。

こいつもFLのシンセで、Signatureというグレードにはあらかじめ入っています。

それ以下のグレードの人は課金しなきゃいけません。また、こいつもvstで販売されているので他のDAWで使えます。

 

ファクトリープリセットから「Childs Play FG」というプリセットを選んで使っています。これはオルゴールみたいな音で、イントロのキラキラした音もこれで鳴らしています。

サビではボーカルの音程を鳴らしながら、コードを分散させたアルペジオを同時に弾いています。こうすると曲の高音パートが綺麗に埋まって、キラキラと煌びやかになってくれます。

 

ピアノ

「朽ちて~ハサミだった」あたりのピアノにはNative Instruments「The Grandeur」というKontakt音源を使っています。

前々から言っているんですが、僕の使うピアノ音源は十中八九こいつです。いっつもこれ。これさえあればなんとかなる。

 

実はサビでもコードを鳴らして煌びやかさマシマシにしています。

「Root」と「3rd+5th」を交互に鳴らしてキラキラ~ってさせてます。

とても綺麗な音です。

 

サイケリード

PsyTranceには「プォン…」とか「ミョーン…」みたいな、気持ち悪い変な音が必要不可欠です。

しかし、Dark Psyというジャンルでは、それよりもさらに過激な「グォオオィインンwwwヴァーヴァーwwwブォォイイイインwwww」みたいな音を使います。

 

こんな感じです(0:49あたりから入ってくる音です)↓

 

ぶっちゃけかなりエグい音なんですが、これがたまらなくカッコイイんですよね~!

というわけで、この音をどうしても曲のなかで使いたいという事情がありました。

…が、こういう感じの音のシンセプリセット、どこにも売ってなかったんです。

これは困った…と悩んでいたある日、Ataさん(↑の曲を作った方です)が「Dark PsyのSerumプリセット出てる」とツイートされているのを見かけました。

マジで!?と思ったら、マジでした。

 

Sick Noiseさんの「Sample Pack for High Tech」です。

あくまで個人リリースのシンセプリセットなんですが、思い通りの音が入っていました。僕、満足!

ちなみに、購入手続きは少し特殊です。Bandcampで販売されていますが、ここは元々音楽を売るためのサイト。なので、買うとデモソングがダウンロードできるようになるだけで、シンセプリセットはまだダウンロードできません。

なので一瞬焦りますが、そのあとSick Noiseさん(このシンセプリセットの制作者さん)から直々にメールでシンセプリセットのファイルが送られてきます。

 

購入方法がちょっと変わっているので入手しづらいかもしれませんが、ものすごく良い音が入っています。こういう感じの音を出したい方は是非買いましょう。

今回は「Lead bandala Mandala 2」「Lead Blaster 2」「Lead Blaster 3」を使いました。

 

ちなみに使い方なんですが、MIDIノーツを細切れに配置することでそれっぽい音を鳴らすことができます。特にオートメーションを書く必要もないので、即戦力になります。

LFOのグラフを弄るとまた雰囲気が変わるので、是非色々試してみてください。

 

あ、忘れるところだったんですが、もう1つだけサイケリードを使っていました。

同じくSerumで、ZENHISER「PsyTrance for Serum 4」というシンセプリセットを使って音の隙間を埋めています。

今回は「Fm Stab 03 ZPS4 - PSYFORSERUM4」というプリセットを加工して使いました。

普段はプリセットをほぼそのまま使うんですが、今回は珍しく大幅に加工しています。

具体的には「Formant-II」というフィルターをかけ、カットオフをLFOで揺らしています。

Formant系のフィルターを使うと、何故か人間の声みたいな音になります。トーキングリードって呼ばれたりします。

 

口笛

曲のイントロやアウトロで鳴っている口笛は「KonKon Whistle」というフリーのKontakt音源です。

フリーなんですが、とても良い音がするので投げ銭してしました。

インターフェースには狐耳ショタが描かれていて、とてもかわいいです。

ちなみにショタコン&ケモナーの兄はこれを見てすんごい興奮していました。正直かなりキモかったです。

 

ただ、オートメーションの書き方などの使い方が良く分からず、wavにバウンスしてからピッチベンドをかけ、ビブラートみたいにするという面倒な手法を取っています。

また、ふとした拍子に音のピッチがズレることがあり、困ることも…。

それでも、後日有料で買った口笛音源より好きな音のする音源です。

無料なので、是非ダウンロードしてみてください。

 

ちなみに、口笛をリードに選んだのは、youさんという方の「Melancholia」という曲をリスペクトしたためです。

Speedcoreですが、曲の途中で口笛ソロのパートがあります。そこをリスペクトしました。暗いメロディを口笛で鳴らすと良い雰囲気出るんです…。

(↓こちらのアルバムの1曲目。クロスフェードではその部分が流れませんが…)

 

リード

しかし、口笛はほとんどサイン波に近い音なので、単体では音が細すぎます。

そこで、これまたスーパーソウ系のシンセリードを使って、音を補強することにしました。

普段はスパソ系のシンセリードを全面・前面に出すんですが、今回はあくまで口笛の補強役。なので、音量はかなり抑えています。

 

今回は2種類のシンセを使って、3つの音を重ねました。1つはご存知Serum、もう1つはLennarDigital「Sylenth1」です。

前者から2つの音を、後者から1つの音を出して混ぜています。

 

Sylenth1は音がシンプルで軽いので、音を重ねるときよく使います。

 

使ったプリセットはそれぞれ、

PRODUCER LOOPS「Trance & EDM for Sylenth」(Sylenth1)

→高域担当で、音に煌びやかさを足す (LD - Top Layer)

INDUSTRIAL STRENGTH「Advanced Dealer - Raw Power」(Serum)

→中高域担当で、メインの音となる (LD - Character 3)

INDUSTRIAL STRENGTH「Advanced Dealer - Raw Power」(Serum)

→中域担当で、音を下(低音)から支えて補強する (LD Fat layer)

です。

 

シンセの音を重ねるときは、こうやって役割を考えて重ねると良い、と言われることが多いですが、そう簡単じゃないです。

かなりの慣れと試行錯誤が必要となります。シンセリードを作るのはいっつも大変です。

 

ボーカル

当たり前ですがYAMAHA「VOCALOID 5 VSTi」です。

せっかくなので、ボイスバンクのパラメータでも書いておきましょうか…。

使用したボイスバンクはv4flowerです。Voice Colorのパラメータは、

  • Exciter -50
  • Growl 50
  • Breathness 25
  • Air 25
  • Mouth 0
  • Character 30

です。多分このパラメータにすればパペッタ花ちゃんの声が出せます。

もちろん、このあとボーカルに色々エフェクトを使っているので100%同じにはならないんですけど…。

 

調声はAttack & Release Effectsを駆使しまくることで処理しています。

ただ、めんどくさいので、今ではピッチベンドで直接ピッチを弄ることの方が多いです。パペッタでは、ラスサビのみピッチベンドをかけ、えげつない歌い方をさせています。

あと、グロウルもかけています。苦しそうに歌っているのはそのためです。

グロウルをかけるとピッチが上下したり音量が下がったりするので、そこは各種オートメーションで対応しておきましょう。 

 

調声は、ピッチのオレンジ線が横一直線にならないよう(音程が不自然に停滞する状態を避けるよう)に気を付ければ、それっぽくなると思います。自然にピッチを揺らす感覚です。

また、音の始めと終わりらへんを1オクターブ下げると、なんかねっとりした歌い方になります。「ヒューズが飛ぶのさあぁ⤵」みたいに。

 

ちなみにこの1オクターブ下げ技法は、ボッカデラベリタ(工事中Remix)を作っているときに気がつきました。柊さんのテクニックを聴いて盗んだ形ですかね…。

花ちゃんで1オクターブ下げをやると結構くどいんですが、ミコトちゃんだと割と上手く行きます。サビも1オクターブ下げしてたんですが、くどすぎたのでサビはやめました。

柊さんはおそらく1オクターブではなく半音・全音、もしくは3度5度くらい下げてるんじゃないかな~と推測してます。

 

使用したサンプルパック

ようやく本命、サンプルパック紹介のコーナー。

ただ。最近、別ブログ「サンプルパック・アーカイブ」を作ったので、あんまり細かい説明はしなくなるかも。

 

ドラム(サイケ地帯全般)

ドラムは基本的にサイケ系のサンプルパックから持ってきました。

キックとスネアは5PIN MEDIA「Progressive PsyTrance」から選択。

キックは「PPS_Kick_03」、スネアは「PPS_Snare_10」です。

 

トップループはZENHISER「PsyTrance Drums」より「050_b__Drum_Beat_145bpm」を選びました。

ドラムループのステムを用意してくれるZENHISERは実に優しい。

 

また、これだけでは少し音数が足りなかったので、中域を埋めるパーカッションも追加しています。

SINGOMAKERS「Psystyle」です。さっきからProg PsyだったりPsystyleだったり、一貫性が無い…後々Psy DubとかHi-Techとかのサンプルパックも出てくるので、もうカオスです。

今回は「SPST_150_Tribal_Percussion_Loop_29」というループを使いました。民族的な音。

 

クラッシュシンバルの音にはlapixさんの「Hitech Ninja Samples vol.1」から「HNS1 Cymbals Crash 01」を引っ張ってきています。

流石lapixさん、良い音が揃ってます。

一方、ライドシンバルの音にはNEW LOOPS「Premium Hi Hat & Rides」から「PHR_Ride-033」。

以前はほぼ毎回使っていたサンプルパックですが、最近はめっきり出番がありません。

ドラム(ハーフテンポ地帯)

2番Aメロでハーフテンポになるので、その部分は違うトップループとパーカッションを使っています。

 

トップループに関してはLOOPMASTERS「Psychedelic Dub & Glitch」の「DnG_93_Tambourine_2」を使いました。

実はこのサンプル、Lonely Sick Dimensionという曲でも使ったんですが、リズム感と音色が好きなのでまた使ってしまいました。

ドラムループの転用はバレにくいんですが、これはちょっと特徴的なのでバレるかもしれません。

 

なお、このループはイントロやアウトロのアンビエントっぽい部分にも乗せています。

パーカッションはPRODUCTION MASTERS「Ambient Panoramas」から「AP_Percussion Loop_08_80BPM」を選んで持ってきました。

Future Garageに合いそうな音。こういう感じのハーフテンポパーカッション、大好きです。

 

ドラム(トリプレット地帯)

2番Bメロのトリプレット盆踊りハネリズム地帯では、これらのループを使うわけには行きません。

そこで、トップもパーカッションも、先程紹介したSINGOMAKERS「Psystyle」に入っているトリプレットのループを使いました。何故か、通常サイケのサンプルパックより使い勝手が良いです。

トップは「SPST_150_Top_Loop_13_(Triplet)」、パーカッションは「SPST_150_Tribal_Percussion_Loop_09_(Triplet)」です。

カッコ書きで「トリプレットだよ~」って教えてくれるあたりにOMOTENASHIの心を感じます。

ちなみに、トリプレット地帯では、スネアやライド、ベースなどもトリプレットにしています。当たり前と言えば当たり前だけど…。

 

ドラム(ドラムン地帯)

それから、2番サビ後のCメロでは何故かドラムンベースになります。

それゆえ、ここではスネアとトップループの音を切り替えています。

スネアはZENHISER「Extreme D&B Drum Hits」より「076_Snare_-_EDNBDH_Zenhiser」を使用。

トップにはZENHISER「Extreme D&B Drum Beats」より「056_b__Drum_Beat_175bpm_-_EDNBDB_Zenhiser」を使用しました。

 

名前からして姉妹サンプルパックですね。

前者はワンショット、後者はループのサンプルパックです。

両方買っておくと良い感じに使い分けができます。

ドラム(ビルド・フィル)

ビルドアップには2種類のサンプルを使っています。

長いビルドにはDustvoxxさんの「Fillist」から「FIST_BuildUp02」を、短いビルドには

先程紹介したlapixさんの「Hitech Ninja Samples vol.1」から「HNS1 SnareRolls 04 147BPM」を用いています。

そして大事なのがフィルイン。

フィルもDustvoxxさんの「Fillist」から持ってきています。

まず、随所で使っているのが「FIST_FILL07」です。これはシンプルだけどかっこいい、名脇役といった感じの音ですね。

 

そして今回大活躍したのが「FIST_FILL39」です。これがめちゃくちゃかっこいいんです。

動画のラスサビあたりで、画面にグリッチがかかる時に鳴っている音です。

このフィルを入れてから曲が一気にカッコよくなり、非常に助かりました。

命の恩人のようなサンプルです。

 

ベース

前述した通り、サイケのベースだけ、諸事情あってサンプルパックを使いました。

諸事情というのは「シンセプリセットでは、どう頑張っても良い感じのサイケベースにならなかった」というものです。

普通のサイケではなくHitech Psyであるということもあり、ベースの処理が難しく、シンセプリセットでは太刀打ちできませんでした。

キックとベースが馴染まないというか、アタック感がないというか、音が繋がって聴こえるというか、低音が綺麗に出ないだとか…。

 

かなり苦戦したので、最終的にはサンプルパックのベースワンショットをご丁寧に並べることで対処しました。

使用したのは前述した5PIN MEDIA「Progressive PsyTrance」です。

ここから「PPS_Bass_04_Levelong_D#1」を抜き出して、これを複製し音程を変えたものを10個くらい用意して、ベースラインを奏でました。

正直、すんごい疲れるので二度とやりたくないです…。

 

エフェクト

曲の最初(オルゴールより前の部分)で鳴る音はかなり特徴的で、曲の顔とも言える部分ですが、実はこいつもサンプルパックです。

KYMOGRAPH「Excimer」から「Impact_E_150_2」というサンプルを選びました。

サンプルそのまんま使って曲を始めるのって、なんか後ろめたいですね。でも気にしない。

ちなみに、アウトロでは転調しているので、サンプルの音程も上げています。

そして、例によってライザーはいつものアレ…ではなく、せっかくHitech PsyTranceのサンプルパック買ったんだし、Sick Noiseさんの「Sample Pack for High Tech」から選んでみようか、ということになりました。

先程はシンセプリセットとして紹介しましたが、少しだけサンプルも入っています。

 

今回は「FX Noise Riser 3」を選びました。シンプルで癖のない音です。ちなみに、長さを変えて、短いやつと長いやつ、2バージョン作って使っています。

ドロップも同じサンプルパックから「One shot 7」を選びました。こちらも2つ差分を用意しています。

 

フォーリー

この曲では実に様々な効果音を使っています。

 

まず最初に聴こえるのはオルゴールを巻くような音。これにはGLITCHMACHINES「Dialect」を使いました。

このレーベルはたまに「バンドル90%オフ!」みたいなおバカセールをやってくれるので、そのときに買うのがベストです。

っていうか、言ったそばから91%オフセールをやっているのを確認しました。

セール前の値段で買うのはやめておきましょう…。

 

今回は「MusicBoxClicks102」「MusicBoxClicks123」を使いました。

僕もこのサンプルパックはセールのとき、欲しくもないのに買ったタチなんですが、ここで役に立つとは…。

いつ役に立つか分からないので、持っておいて損は無いと思います。

 

次に聴こえるのは、木が擦れぶつかる音。これは、人形の手板を操る音をイメージして挿入しています。

こちらはGLITCHMACHINES「Metaphor」です。はい、同じセールのときに買ったやつです。

しかし厄介なことに、同じサンプルの使い回しがバレるのを恐れているのか、15個以上もサンプルを並べてしまっています…。列挙するのが死ぬほど大変そう。

頑張って書き出します。今回使ったのは、

「WoodSticksOnWoodTabletop3」

「WoodSticksOnWoodTabletop26」

「WoodSticksOnWoodTabletop45」

「WoodSticksOnWoodTabletop62」

「WoodSticksOnWoodTabletop63」

「WoodSticksOnWoodTabletop65」

「WoodSticksOnWoodTabletop86」

「WoodSticksOnWoodTabletop87」

「WoodSticksOnWoodTabletop88」

「WoodSticksOnWoodTabletop90」

「WoodSticksOnWoodTabletop91」

「WoodSticksOnWoodTabletop92」

「WoodSticksOnWoodTabletop93」

「WoodSticksOnWoodTabletop95」

「WoodSticksOnWoodTabletop96」

「WoodSticksOnWoodTabletop157」

 

です。…いや、この情報要る?

連番なのに使われなかった89と94が可哀想です。

 

Aメロに入ると、歌詞に対応した音が鳴るようになっています。

「リューズ回せずに」の直後には、時計のリューズを回すような音が鳴ります。

この音は、実はGLITCHMACHINES「Dialect」の「MusicBoxClicks104」です。

なんと、オルゴールの音だったんですね。

 

次に「ヒューズが飛ぶのさ」に関しては、ヒューズが飛ぶときのようなスイッチ音を鳴らしています。

こちらはBLASTWAVE FX「TVs」から「TelevisionSet_S011TE.958」を選んで使っています。

「ヒューズが飛ぶフォーリー音」なんて流石にニッチすぎて存在しない(存在したとしても見つけるのに数年かかる)ので、似たような音で代用しています。

 

 

「エクスキューズ欲しがって」では、電話のツー、ツー、という音を入れました。

友達に絶交されて電話が繋がらないのをイメージしています(なんと残酷な発想…)。

こちらはBLASTWAVE FX「Cellphones」です。「CellPhoneRing_SFXB.4071」を使いました。

 

「チューズし違えるさ」の後には、ガラスを粉砕する音を入れています。

懲りずに暴れ散らかす主人公。とても哀れ。

これにはVIDEO COPILOT「Motion Pulse Impact」の「Crash_Glass_01」を使っています。

このレーベルについてはお兄ちゃんの方が詳しいのでノーコメント。本来は映像系の会社だそうです。

 

「薬漬けになって」では、コップの中に薬をチャリンチャリンと入れる音を入れています。

これはまたしてもGLITCHMACHINES「Dialect」

「MarblesInsideDrinkingGlass19」を使いました。入れていたのは薬ではなくマーブル?だそうです…。

 

「自傷繰り返すのさ」では、リスカして血がビシャァアってなる音を入れています。

サンプル単体で聴くと結構生々しくてグロい音です。

VIDEO COPILOT「Motion Pulse Organic」から「Meat_Slice_10」を使いました。

肉…切断…リスカよりもっとグロかった。

 

そして大詰め。最後のアウトロ部分です。

アウトロ部分では、ハサミを手に取り、ハサミを開き、糸を切る音がして曲が終わります。

このあたりの音は探すのに苦労しましたが、音でストーリーを伝えるために頑張った部分でもあります。

今回はBLASTWAVE FX「Foley 5」を使っています。これ、単にフォーリー音を集めただけのサンプルパックなので、ここからハサミの音を見つけられたのは奇跡だと思います。しかも、シリーズ物のサンプルパックだし…。

「ScissorsPickUp_S08FO.2273」「ScissorsOpen_S08FO.2271」「ScissorsClose_BW.10177」を選びました。実に分かりやすいファイル名。

めっちゃ時間かかった

というわけで、なんとか全ての音源とサンプルパックを書き出しました。

曲を作るのも時間かかりましたが、ブログを書くのにもかなり時間がかかりました…すごい疲れた。

 

余談ですが、この『パペッタ』は、僕たち兄弟の卒業制作作品として大学に提出します。

現在、解説論文執筆中です。ブログよりも論文を書くべきだった。

なんとこのブログ、2万字近いです。下手したら論文より長いよ。

力の入れどころを完全に間違えています。

 

でもまぁ、やってしまった以上は良しとしましょう。

今後も、オリジナルボカロ曲を精力的にリリースしていこうと思ってますので、是非とも応援よろしくお願いします。

 

それでは、ヒズミ零でした。さよなら~