青零(セイレイ)

映像制作・作詞担当のアオねこ(aoneko)と、ボカロP・トラックメーカーのヒズミ零(cutable)の情報をまとめた公式ブログです

【楽曲解説】エバ(工事中Remix) feat.鳴花ミコト&鳴花ヒメ

 

楽曲情報

ボーカロイドアレンジカバー曲『エバ(工事中Remix)』

原曲:柊キライ『エバ』

 

原曲の視聴はこちら

 

楽曲の視聴はこちら


音源・オフボーカルのダウンロード(フリー)はこちら

初めてバズりました

こんにちは~、ヒズミ零です。今回の楽曲解説は『エバ(工事中Remix)』です。

多分この記事を読んでくださってる方は『エバ』をご存知だとは思いますが…。

ご存知ない方は、ブログの一番上にリンクがあるのでまず聴いてみてください。ものすごいカッコいいです。

 

『エバ』は、柊キライさんという有名なボカロPさんが制作したボーカロイド楽曲です。

柊キライさんは今ボカロ界で最も勢いがあるんじゃないか…?っていうくらいの名曲を生み出し続けているボカロPさん。

『オートファジー』で一気に有名になった方ですが、それ以前の作品もどれもハイクオリティです。

そのうえ、最新作である『ボッカデラベリタ』はその『オートファジー』をも上回るマイリスト数…。

僕のなかでは「2020年最強ボカロP」だと思ってます。

 

そんなつよつよ柊キライさんの『エバ』を、よわよわヒズミ零がアレンジカバーしてしまったということです…。恐れ多い。

…なんですが、僕が想定していたより遥かに大きな反響がありました。具体的には、

  • 1か月で5000再生(過去作は平均1000再生以下)
  • ボーカロイド日刊ランキングに2回ランクイン
  • 二次創作(三次創作)の作品が幾つか投稿された
  • キャスなどで歌ってくださる方が現れた
  • 原作者である柊キライさんが僕のリミックスをTwitterで紹介
  • 柊キライさんが僕をフォローバック

最後とかもう意味分かんなかったです。夢でも見てるのかと思いました。

本当にありがたい限りです。

 

あのときは、動画を投稿して、今回もあんまり伸びないだろうなぁと思ってパソコンで作業してたんです。

そして、ふとスマートフォンを見たらリツイート&ふぁぼ通知の嵐で…。

何事だと思ってTLを見たら、柊キライさんが僕の動画を紹介してくださっていました。

喜びでパニックになっているなか、通知欄を改めて見ます。すると、通知のなかに紛れて「柊キライさんがあなたをフォローしました」と。

生きてて良かった、って久々に思った気がします。

 

といった感じで、ものすごく大きな反響をいただきました。

柊キライさん、聴いてくださった皆さん、本当にありがとうございます。

 

柊キライさんの良さが分かるまで

今でこそ僕は柊キライさんの大ファン(ボカロPさんのなかで一番好き)ですが、実は以前は全くノーマークのボカロPさんでした。

ぼからんでほぼ毎週『オートファジー』がランクインしていたので、もちろん柊キライさんの存在自体は知っていました。

ですが、ぶっちゃけ「イラストも曲も独特で癖が強いなぁ…良さが全然分かんない…」というのが本音でした。

 

というのも、僕は2010年代前半のボカロ黄金期に育った人間です。

良い意味で平成臭い、荒れ荒んでいたけれど何やかんや思い出深い青春の日々。

僕はあの頃のポピュラー路線のセンスに浸っていました。

 

なので、2019年の夏、久々にボカロ界に戻ってきたとき、そのセンスのギャップに追い付けてなかったのだと思います。浦島太郎みたい。

 『オートファジー』はちょうどその頃に投稿された作品です。『オートファジー』に首を傾げていたのはひと夏の思い出。

 

それからざっくり半年くらいが経って、2020年になりました。

さぁ今年はどんなボカロ曲が生まれるのかな、と思ってぼからんを見ます。

そこで出会ったのが『エバ』でした。

 

イラストと調声だけで『オートファジー』の人だと分かったので、当初は「やっぱりこの人は相当癖が強いな」程度にしか思っていませんでした。

なんですが、そのときは何かが違ったんです。ぼからんを見終えたあと、妙にその曲のことが気になったんです。

「…なんか、もう一回くらい聴いてみたいなぁ…」って感じで。

 

それで、もう一回聴いてみました。あ、なんか癖になるかもしれない。

YouTubeのオフライン再生に保存して、外出しながら聴いてみました。この曲、良いかもしれない。

気が付いたら「この曲めちゃくちゃカッコいいじゃんか…」となっていました。

『オートファジー』から約半年。半年かけて、柊キライさんの魅力を理解したというわけです。長かった。あまりにも長すぎた。

 

ちなみに後日、『オートファジー』にも見事ハマることになります。

柊キライさんの曲の良さが分からないという方は、時間を空けて何度か聴いてみてください。

ある瞬間、柊キライさんの音楽の持つ凄まじい力にハッとさせられると思います。

 

思い立ったが吉日

完全に『エバ』にハマった僕は、あることを感じていました。

それは「サビ、テンポが倍になっているように感じるな…」というものでした。

 

ご存知の通り(いや、ご存知ないかもしれないですが)、僕はSpeedcoreという超高速音楽をメインに作っています。

BPMで言えば300BPM以上が前提となるジャンルです。

そのため「サビをSpeedcoreにしたら面白そうだなぁ」と、なんとなーく考えていました。

 

そんなあるとき、Twitterで柊キライさんが『エバ』のボーカルMIDIデータとoff vocalデータを配布していることに気がつきました。

そのうえ、『エバ』のコード進行も公開していらっしゃいました。

それを見た瞬間に「あ、これやろうと思えばリミックスできるな」と思ったんです。

 

そして、こっからが超展開でした。

リミックスしようと思い立ったその日のうちに、柊キライさんにメールを送って「リミックスしても良いですか?」と聞いてみたんです。

今考えると、めちゃくちゃ無謀で大胆で無計画な行動だったなと思います。

ですが、柊キライさんは「してくださって構いませんよ」とご丁寧に返信してくださいました。

すごく優しい方で良かった…と思ったのを覚えています。

 

話が逸れますが、僕は2020/03/31にオリジナル曲を投稿する予定でした。

この日はそう、鳴花ーズの誕生日(発売記念日)です。

なので、当初は「鳴花ーズ誕生祭に向けて新曲を書こう!」と思っていたわけです。

それに向けて、絵師さんにイラストもお願いしていました。

 

ですが、その曲はどうも上手く作れず、(大袈裟に言うと)軽くスランプに陥っていました。

そんなときに『エバ』のことを知ったので、「鳴花ーズ誕生祭、エバのアレンジカバーにすればいいじゃん!」と思い立った…というわけです。

ただ、当然ではありますが、依頼していたイラストをキャンセルし、新たにエバ用のイラストを描いていただくことになりました…TMKさんマジでごめんなさい案件です。

 

余談ですが、この曲のガバキック制作をする際、「マジモンのスランプ」に陥ることになります…。

 

ジャンルについて

さて、余談はこの辺りにして、曲の中身の解説に入っていきます。

 

原曲のエバは確か141BPMで、Rock要素のあるElectro Swingといった感じでした。

柊キライさんはどちらかというと生楽器系の曲を作っていらっしゃいます(それなのにSerumMassiveを使いこなすハイブリットな方です、ほんとに凄い)。

 

一方、僕は芯の髄からデジタルの人間です。生楽器は昔習っていたピアノしか分かりません。

ですので、生楽器を録音することは100%ありません。100%ソフトシンセとサンプル素材で音楽を作っています。ピアノでさえKontakt音源。

これを逆手に取って、温かみのある生楽器系の原曲を、冷たいデジタルチックな曲にアレンジしよう!と思い付きました。

 

そこで、ジャンルを何にしようか少し悩みます。

Speedcoreとその他のジャンルを混ぜ合わせて曲を作るのが僕の流儀ですので、サビでSpeedcoreにするのは確定していました。ですが、もう一つのジャンルが決まらない…。

 

そこで思い付いたのが、150BPM前後というテンポにぴったりである、Psychedelic Tranceでした。

『エバ』はダークな雰囲気なので、サイケの怪しい雰囲気が合うんじゃないかなーと思ったというわけですね。

ただ、最初から最後までPsychedelic Tranceにしてしまうと、ややマニアックすぎて一般受けしないかなと思ったので、曲全体としてはHi-Tech Full onというジャンルにしました。

 

Hi-Tech Full on(通称Hi-Tech、ハイテック)はPsychedelic Tranceのサブジャンルです。

ジャンルの話をし始めるとすごく厄介なのですが、ざっくり言うと「音数や展開が多くて、派手でイケイケなジャンル」です。

本来はサイケのサブジャンルなので、サイケ特有の怪しい雰囲気ゆえ、それほどポピュラーな音楽ではありません。

これでも十分カッコイイんですが、まだまだ「万人に受ける」という感じではないです。

 

ですが、日本ではlapixさんを中心として「日本流Hi-Tech」が誕生し、サイケのアングラ感が薄れ、万人受けするようなカッコいいイケイケジャンルに変化していきました。

 

日本のHi-Techはこんな感じです。さっきの動画と聴き比べてみてください。大分雰囲気が違うと思います。

音が次々と現れては消え、超高速に展開していく…。こうした音数と展開の多い音楽は日本で好まれやすいようです。

特に音ゲー界隈、DTM界隈では大人気のジャンルです。

 

というわけで、僕もこのジャンルでイケイケな『エバ』リミックスを作ることになりました。

実はHi-Techは『工事現場EP』に収録している『精神転送ガール』という没曲でも作っています。

なので、Hi-Techを作ること自体はそこまで難しくなかったです。

 

…ここだけの話、『精神転送ガール』よりも手を抜いていたのでさほど苦労しなかった、というだけなんですけどね…。

『精神転送ガール』は作曲が死ぬほど適当な割に、編曲だけ無駄に頑張ってしまった感があります。

この熱量を『エバ(工事中Remix)』に注げば、もっとカッコよくなってただろうな…。

 

曲の展開とか

イントロ

イントロは完全にHi-Techです。Hi-Tech特有のエレクトロなベースと飾りの上物が鳴ります。そこに原曲イントロのフレーズが被さってきます。

実は、このピアノの音を入れたのは、ほぼ完成間際になってからです。高音域の煌びやかさが足りなかったので、後から足しました。

当初は「デジタル全開な曲にしよう!」とか思ってたのに、このざまです。結局生楽器を使いました(Kontakt音源だけどね…)。

 

1番Aメロ 

1番のAメロもHi-Techです。Hi-Techにミコトちゃんのボーカルが乗っかります。

歌モノHi-Techってなかなか無いですよね。あったとしても、ブレイクとかで歌が入って来ます。

Hi-Techの「音めちゃくちゃごちゃごちゃゾーン」にボーカルが被さってくることはまずありません。

でも、「ボカロ曲にする」っていうのはそういうことなので、やっちゃいました。

 

ちなみにAメロは1拍ごとにコードが変わるそうです。

コードネームが分からないので、泣きながらコードを調べてMIDIを打ち込みました。

ただし、1拍ごとにコードを変えたのは後述する「テケテーテケテー」の部分だけです。

ベースのルート音を1拍ごとに変えるとぐちゃぐちゃになるので、ベースは1小節ごとにコードを変えています。

 

1番Bメロ

Bメロに入るとジャンルが一時的にPsychedelic Tranceに変化します。

やっぱりHi-Techの親はサイケ、相性はバッチリです。

ここは「ヘイヘイ 平々凡々」という、この曲の鍵となるフレーズが出てくるパートなので、ジャンルを変えて曲調に変化を付けた…という感じでしょうか。

 

ちなみに「ヘイヘイ 平々凡々」のところだけ映像がピンク色に変わります。これは、ここだけ鳴花ヒメちゃんが歌っているということを暗に示しています。

逆に、原曲のアクセントカラーが黄色なのにこの動画のそれが青色である理由は、ミコトちゃんが歌っているからです。

歌っているキャラに合わせて画面の色を変えるというのは僕のお兄ちゃん(映像作ってる奴)のアイデアでした。お見事。

 

1番サビ

そして「あなた方からやめられないか?」に合わせてガバキックがフェードインしてきます。

いつものやつです。僕のアイデンティティ。餅は餅屋。ガバキックはヒズミ零。

サビは問答無用でテンポが倍になり、ガバキックが鳴り響き、Speedcoreになります。

サビ後半では4倍速です。とにかく速いです。

 

当初、1番のサビは普通のHi-Techにしようと思っていました。

ですが、「もしランキングとかに載ったとき、Speedcoreじゃない部分が流れるのはやだなぁ」と思ったのでSpeedcoreにしました。

僕の目標は「Speedcoreを布教する」「僕のことをSpeedcoreのヤバイ奴として覚えてもらう」ことなので、こうしました。

自己顕示欲の塊。あたしのこと見てほしい。それは罪深いと教えられたばかりなのに…。

 

1番間奏 

間奏に入ると、原曲イントロに出てくるフレーズがSuper Sawっぽい音で鳴ります。

間奏はボーカル無しなので映像が黄色に戻ります。

…ですが「ヘイヘイ 平々凡々」を皮切りに映像が赤色に変化します。

実はここ、『オートファジー』になってるんです。

ここのSuper Sawっぽい音で鳴らしているのは、『オートファジー』イントロのフレーズです。

ちゃっかりミコトちゃんに「わかった頃にハロー」とか歌わせています。

 

2番 

2番の入りは画面がピンク色になります。ここもヒメちゃんが歌ってます。

原曲のここのパートで、ボーカルの花ちゃんの声質が変化するのをオマージュしています。

それ以降、2番サビ終わりまでは1番とだいたい同じような感じです。

ちなみに2番サビは最初っから4倍速です。後半は8倍速になったりならなかったりします。もうめちゃくちゃや。

言い忘れてましたが、「虚ろでいられるから」でミコトちゃんの顔が暗くなるのもお兄ちゃんのアイデアです。ナイス。

 

2番間奏 

2番サビが終わると急に音が小さくなって画面が暗くなります。

ここでは、ミコトちゃんのボーカルを切り刻んで並べたものを重ねています。

そこに、ローパスフィルターをかけてDJプレイっぽくしています。クラブミュージック感を少しだけ出したかったんです。

ただ、音圧爆上げクラブミュージックであるがゆえ、このパートの入りで音が少し歪んでしまっています…。

YouTubeのものは修正版なので歪んでいませんが、ニコニコ動画ではジリジリと歪んでいます。惜しい。

 

クラブミュージック感を出したかったので映像もなんか派手です。「派手にして」と言ったら派手にしてくれました。

そのあとの「ヘイヘイ 平々凡々」はアドリブで入れてます。原曲では入って無かったんですが…。

 

そして間奏に入ります。ここでは、原曲の間奏で鳴っているピアノのメロディーを多少アレンジし、Super Sawっぽい音で鳴らしています。

っていうかここの映像凄いですね。どうやって作ったんだろう…。動画のコメントでもこのシーンは好評でした。

 

3番Bメロ 

そして最後のBメロに入ります。当初はここも普通にPsychedelic Tranceにしようと思っていたんですが、変化が無くて面白くないなぁ、飽きちゃいそうだなぁ、と感じていました。

そこで急遽、ここのキックをガバキックに差し替え、Psystyleっぽくしてみました。

それだけでも良かったんですが、せっかくなのでSpeedcoreも混ぜてよりカオスにしています。

ほんとに情緒不安定なリミックスです。

 

ラスサビ 

原曲ではこの後ラスサビに入って最後の盛り上がりを見せます。

ですが、僕はなんとなく「ラスサビで盛り上がると見せかけて、急に静かにしてみたいな」と思っていました。

なので、ラスサビに入るとピアノ(とサブベース)の音とボーカルだけになります。

 

実はここで一か所だけ、原曲のコードを弄ってテンションコードを挟んでいます。

「愛してほしいの」の所です。ここだけテンションが挟まっていて、ちょっと切ない雰囲気になっています。

ここでイラストが涙ありの差分に変化しているのも、それをイメージさせるためです。

兄ちゃんに「やれ」と言ったらやってくれました。

 

ちなみに、ここのパートでは原曲を強く意識しています。画面が黄色いのも、文字の動きが本家動画と全く同じなのもそのためです。

そのうえ、ここだけボーカルが花ちゃんです。本家の声質に似せようとしたけど全然似なかったので、ミコトちゃんの声とあまり区別がつかなくなってしまいました。

でも気づいてくれた人はいたので嬉しかったです。

 

そうして切なげに花ちゃんが歌っていると、ミコトちゃんが「わ゛!か゛!る゛!゛け゛!と゛!」と乱入してきます。ガバキックも乱入します。

エモーショナルな雰囲気をぶっ壊して、またSpeedcoreが始まります。本当に情緒不安定。メンヘラアレンジ。

ラスサビ後半はもう僕でも面倒見切れないくらい速くなります。

ドゥルルルルルルルルブーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!みたいな…。

お察しの良い方ならお気づきだと思いますが、画面が青とピンクのグラデーションになります。

そうです、ここはミコトちゃんだけでなく、ヒメちゃんも一緒に歌ってます。ほとんど聴こえないけど。

 

アウトロ 

全体的に原曲の雰囲気を意識したアレンジにはなっていますが、アウトロでは原曲の雰囲気とは真逆の雰囲気になります。

原曲では暗くダークな感じで後味悪く、音もルート音に収束せず終わります。

一方で、僕のアレンジでは何故か底抜けに明るくハッピーな感じになりました。

 

僕のなかで『エバ』は暗くて怪しいイメージが強かったんですが、サビのメロディーだけ取り出してシンセで鳴らしてみると、意外と明るいメロディーだということに気が付きます。

この明るさは「これはこれで良いな」と思ったので採用。ちゃんと音もルートに終始させて曲を締めました。

 

…ガバキックで締めたんですけどね。「デェエエェエェェェェェェェエェンwwwww」って終わるのが本当にシュールで、何度聴いても笑えます。

 

使用した音源

ここまでで既に7000字以上書いているので、ここまで読んでくれている人はまぁいないと思うんですが…恒例の音源&サンプルパック紹介をやっていきます。

 

ガバキック 

まずは恒例のキックから。キックはサンプルパックを使っているのでシンセは一切使用していません。サンプルパックは後で紹介します。

その代わり、ガバキックではいつものアレを、Sonic Academy「Kick 2」を使用しています。

 

ただし、今回からガバキックの作り方が変わりました。

何故かと言うと、とある有名なハードコアアーティストの方に僕の曲を聴いていただく機会があって、そのときに「キックのアタックが弱くて埋もれている」という指摘を受けたからです。

それ以降「キックを重ねる」という技法を知り、アタックと低音がしっかりしているガバキックを作るようになったというわけです。

恥ずかしいのであまり聴かれたくないのですが、過去作と比べるとだいぶ違うと思います。

 

ただ、キックを重ねるのはものすごく難しくて、何度も挫折しそうになりました。

というか、一度マジで挫折して半狂乱になって、帰省して療養していました。

本当にガバキックを作るのは難しいです。ガバキック研には手を出すな…。

ガバキックは完成間際ギリギリまで修正していたので、本当に苦労した思い出しかありません。

 

ベース 

次にベースです。ベースはシンセだけでなく、サンプルパックの音も使用しています(後述)。

Hi-Tech特有の歪んだエレクトロベースはNative Instruments「Massive」です。

UK Hardcoreもそうですが、こういう歪んだエレクトロベースはなんとなくMassiveを使うことが多いです。Serumでも良いのに。

 

使用したシンセプリセットはFAMOUS AUDIO「Bass Music Massive Presets Collection」です。

こいつの「BS BUTTERFLY」を選びました。ストレートなエレクトロベースって感じで良いですね。

それにしてもこのシンセプリセット、ジャケットが地味ですね。探すのに少し時間がかかりました。買ったこと忘れて二重購入しちゃうタイプのジャケット。

 

コード

曲のなかでずっと「テケテーテケテーテケテーテケテーwww」と鳴っているコードはXfer「Serum」です。それを2台立ち上げて音を重ねています。

音を重ねてたなんて今初めて知りました。昔に作ったもの、どうやって作ったのか忘れがち。

 

1つはBLACK OCTOPUS「Limitless by MDK - Seum Preset」から「CHORD - Supersaws」を選択。

もう1つはBLACK OCTOPUS「Limitless 2 by MDK - Seum Preset」から「CHORD - Shovel Might」を選択しました。

同じシリーズのシンセプリセットじゃないですか…これ、絶対ブログで紹介するために重ねたでしょ…。

 

前者はのこぎり波、後者は矩形波っぽい音です。

異なる形の波形を重ねると音が良い感じになるらしいです。

ただ、プロジェクトファイルを見た限り、後者の音が全然目立っていないので、ぶっちゃけ音を重ねず前者だけ鳴らしても良かったような…。


コードが「テケテーテケテーテケテーテケテーwww」とリズミカルに鳴っているのは、そう打ち込んだわけではなく、Xfer「LFO Tools」を使ってトランスゲートをかけているからです。

ご丁寧に「テケテーテケテーテケテーテケテーwww」とノーツをちまちま打っても良いんですが、全体のリズムを変えるときやコードを変えるとき面倒なので、トランスゲートで一気に処理すると楽です。

まぁ、リズムを最初から最後まで変えられないのはデメリットですが…。

 

パッド 

BメロのPsychedelic Trance地帯でもコードを鳴らしています。

ただ、前述したコードはかなり派手で存在感があるので、アタックの弱い、なめらかで静かで暗いパッド系の音を鳴らす必要がありました。

 

そこで、パッドにもSerumを使用しています。

使用したシンセプリセットはNEW LOOPS「Seum Pads」です。

ここから「Justice」というプリセットを選択しました。ジャースティィィィィス!!!!!!!!!!!!!!!

このシンセプリセットは前にも紹介した気がします。バンドル版があるのでそちらを買ってください。

 

ちなみにこのパッド音は、サビでも鳴らしています。音の密度が上がるかなぁと思ったんです。効果は微妙でした。

 

アルペジオ 

サビではアルペジオを鳴らしていますが、これにはSPECTRASONICS「Omnisphere 2」を使っています。

「Sizzle Gourd Kalimba Finger」というプリセットを使用しました。

 

僕は最近、カリンバの音にハマっています。きらきらしてて綺麗、好きな音です。

それゆえ、アルペジオではカリンバの音を使うことが多いです。

ただし、カリンバ音源はOmnisphere 2くらいしか持っていません。

そのため、アルペジオにはOmnisphere 2を使う割合がめちゃくちゃ高いです。

 

ちなみに、サビではサブメロディーも鳴らしているんですが、これもOmnisphere 2です。

使用したプリセットは「Sizzle Gourd Kalimba Coin」。

プリセット名で分かりますが、ほとんど同じ音です。なんで統一しなかったんだろう…。

「蝿の王になればいいのさ」の後の「キランッ」もこの音です。

 

リード 

間奏で鳴っているシンセリードはLennarDigital「Sylenth1」SerumMassiveの3つを重ねています。

有名シンセ大集合みたいな音の重ね方ですね。Spireがいたら完璧だった。シンセ四天王。

 

シンセリードを重ねるのは本当に難しいです。「目的を持って音を重ねる」のがコツですが、慣れないとなかなか上手く行きません。

使用したシンセプリセットは

  • UNEEK SOUNDS「Fresh Leads 2 for Sylenth1 Massive」(Sylenth1)
  • UNEEK SOUNDS「Serum Structures Vol.1」(Serum)
  • UNEEK SOUNDS「Fresh Leads 2 for Sylenth1 Massive」(Massive)

です。全部UNEEK SOUNDSじゃねーか!!!

 

それぞれの使用プリセットとレイヤーの役割は

  • LD Redrum (超高域成分。音を明るくします)
  • [LD] Spread Eagle (高域成分。中心となる音です)
  • LD DAZZED (中域成分。音を支えて太くし、安定感を与える音です)

といった感じです。

 

ちなみにUNEEK SOUNDSのシンセプリセットはバンドル版があるのですが、製品のまとめ方が謎で、重複購入や買いそびれのリスクが高いです。

バンドル版は割安ですが、買うときはよく調べてから買いましょう。


その他

あ、そうそう…。曲の至る所で飾りとして鳴っているピアノはNative Instruments「The Grandeur」です。ようやく綴りを覚えられた。

Kompleteに入ってるので…。

 

それから、もう書かなくても良いと思いますが、ボーカルはYAMAHA「VOCALOID 5 VSTi」です。4じゃないですよ。5です。そんでもってvstです。

 

ちなみに、ミコトちゃんの声をカットアップして並べているのは、FL Studio標準(ただし付いてくるグレードは限定されます)のImage Line「Slicex」です。

FLユーザーでなくとも購入できるvstプラグインです。ボーカルチョップを作るとき、なんやかんやお世話になるプラグインです。

まぁ、めんどくさいんですけどね…あと使い方がよく分からない。


使用したサンプルパック

ここまでで1万字。誰も読んでくれなくとも、僕は書き続けます…。

 

キック 

まずはドラム隊。

キックにはlapixさんの「Hitech Ninja Samples Vol.3」を使用しています。

柊キライさんはキックにすごくこだわっていらっしゃる方なので、サンプルパックからキックを選んでタイムラインにペターするのは非常に…なんというか…恥ずかしい気持ちになりました。

 

しかしながら、lapixさんは日本を代表する最高峰のクリエイター。キックサンプルのクオリティは抜群。アタック感、低音成分、ともに完璧です。

なので、サンプルのキックをペターするだけでも十分に良い音です。

今回は「HNS3 Kicks 21」を使用しました。

 

あとは、FL標準サンプラーでリリースを短くし、Native Instruments「Transient Master」でアタックを強調し、Fabfilter「Pro-C」でさらにアタックを強め、Dada Life「Sausage Fattener」でサチュレーションをかけ、Fabfilter「Pro-Q3」で低音を持ち上げています。


プロジェクトファイルを見ていると、アタックと低音を出そうと必死になっているのが伝わってきて面白いですね。

柊キライさんに聴かれても恥ずかしくないキックにしたかったんだと思います、多分。

 

ガバキック 

問題はガバキックです。

これまではKick 2を歪ませてハイオワリー、でした。

ですが、キックは歪ませると音量が上がります。

アタックはもともと音が大きいですが、本来音の小さいリリースの音量も上がります。

ゆえに、アタックの音が相対的に小さくなってしまうんです。

「ドンッ」という歯切れ良い音が「ベー」という鈍い音になります。

 

そこで、今回はアタックの音を付け足すために、もう1台Kick 2を立ち上げ、歪ませていないキックを重ねています。

このキックで、低音のアタック感を補っています。

さらに、「Hitech Ninja Samples Vol.2」に収録されている「HNS2 Kicks 04」というキックサンプルのアタック部分だけを切り取って重ねています。

こちらは高音のアタック感を担っています。

 

以前のガバキックは「歪ませたKick 2のみ」でしたが、現在ではこのように「歪ませたKick 2+低音のアタックを担うKick 2+高音のアタックを担うキックサンプル」といった感じに音を重ねてガバキックを作っています。

すごく面倒で難しいですが、こうするだけでガバキックを連打しても音がハッキリ聴こえるようになり、Speedcoreとしてのクオリティがグッと上がります。

 

現在のガバキックに至るまで、実に半年以上研究と試行錯誤を重ねました…。

泣きながら何百回とガバキックを作ってようやく完成した自分なりのガバキック。

艱難辛苦の記憶は消えませんが、僕のガバキックは僕の命として今後ずっと活躍してくれそうです。

 

キックの話だけで1万字は書けそうなので、そろそろ次に…。

何の話だっけ。あっ、そうだドラム隊の話だった。

 

その他ドラム 

スネアにはlapixさんの「Hitech Ninja Samples Vol.3」の「HNS3 Snares 13」を使用しています。

やっぱりHi-Techを作るときにはHi-Techのサンプルパックから音を持ってくるのが一番です。

 

ハイハットも同様のサンプルパックから「HNS3 Cymbals Close Hihats 11 138 BPM」を使用しています。

ただ、このハイハットループには何故か「チーンww」という謎の音が入っていたので、そこだけカットして残りの部分を使いました。

ドラムループの一部を切り出して使うことはよくあります。

 

ちなみにSpeedcore地帯では、ガバキックのアタックをさらに強めるため、スネアとハイハットも合わせて連打しています。めちゃくちゃうるさいです。

ハイハットのワンショットには「Hitech Ninja Samples Vol.2」の「HNS2 Cymbals Close Hihats 02」を使いました。

 

フィルにはHY2ROGEN「Essential Fills Vol.5」から「PSEF5 Drum Fill 74 128 BPM」を使用しました。

Vol.5があるということはVol.1~4もあるし、なんならVol.7まで出てます。

全部買ってください。

 

ラスサビ手前の「キーン…」という澄んだ音はBLACK OCTOPUS「Ambient Selection by AK &Tim Schaufert」の「DrySnap 023」です。

スナップ、要するに指パッチンみたいな音ですね。

原曲ではリバースドラムみたいな音でしたが、それに相当するサンプルがどうしても見つからなかったので、スナップの音を選びました。

結構このサンプルに辿り着くまでに時間がかかった覚えがあります。

 

ベース(Hi-Tech) 

ようやくドラム隊の話が終わりました。問題はベースです。

Hi-Techのベースはエレクトロなベースやワブルベースが入り乱れ、とにかくカオスです。

メインとなるエレクトロなベースはシンセを使いましたが、ワブルベースは面倒なのでサンプルパックを使いました。

 

今回目を付けたのはZENHISER「Luminous」です。Complextro~今風のエモいEDMって感じのサンプルパックです。

ComplextroのサンプルパックはHi-Techにも応用が効きそうなので買いました。

ただし、半分くらいコンストラクションキットでした。

ワブルベースのループがたくさん収録されている便利アイテムというわけではないので、ちょっと使いにくかったです。

 

それでもなんとか良いサンプルが見つかったので、それを切り刻んで並べてHi-Techっぽくしました。

「006_Bass_-_Dope_Bass_Glitch_F#_-_LUMINOUS_Zenhiser」「007_Bass_-_Dope_Bass_F#_-_LUMINOUS_Zenhise」の2つです。

Spliceとかで聴いていただければ分かりますが、ものすごくカオスで無秩序なワブルベースのループです。

ここから「ここの音使えそう」と思った場所を切り出して並べています。

 

ワブルベースを先にリズム良く並べ、その隙間にエレクトロベースを入れています。

重ねてしまうと低音が被ってしまうので、重ならないようにしています。

エレクトロベースとワブルベースが交互に鳴っているようなイメージです。


ベース(Psychedelic Trance)

あと、Psychedelic Trance地帯のベースもサンプルパックです。

コードが次々変化するパートだとベースのループ素材を使うのは難しいのですが、ここはほとんどコードが変化しないので、ループ素材でなんとかなりました。

というのも、シンセプリセットではなんかしょぼくて思うようにならなかった、という事情がありまして…はい。

 

今回はSINGOMAKERS「Psystyle」から「SPST_150_D_Bass_Loop_33」というベースループ素材を使いました。

SINGOMAKERSは音のクオリティが高くて割と評判が良いメーカーというイメージがあります。

素直にPsychedelic Tranceのサンプルパックを使えばいいんですが、何故かこいつしか持ってなかったのでこれを使いました。

 

上物 

そして、Hi-Techのキモとなる上物の音です。実はここで手抜きをしました…。どうして…。嗚呼どうして…。

『精神転送ガール』ではたくさんのサンプルを切り刻み、Hi-Techとしてしっかり作り込んでいったのですが、今回は面倒だったので、数個のサンプルをペターしただけです。ひどい。

 

今回はTEMPORAL GEOMETRY「Energy Core EDM Elements」を使用しました。

ここから「130EnergyCoreGlitches06」「130EnergyCoreGlitches08」「130EnergyCoreGlitches09」「130EnergyCoreGlitches15」「130EnergyCoreGlitches19」を使って、良い感じに並べて誤魔化しています…。

 ただ、普通に貼っただけではそれっぽくなかったのか、少しピッチを上げていたみたいです。


エフェクト

そして、一番憂鬱なのがエフェクト類の紹介…めんどくさい~…。

今回は色々なエフェクトを無駄に何種類も使っているので書き記すのが本当に面倒です。でも頑張る。

 

ライザーはなんと3種類使っています。全てNEW LOOPS「Club Risers」です。

使用したのは、

  • 2 Bars - Circulator (半分の長さにして使いました)
  • 2 Bars - Up and Out (後半をカットして使いました)
  • 8 Bars - Inflation

です。曲の展開の仕方は様々なので、各所の盛り上がりに応じて音を使い分けています。死ぬほど面倒です。


ドロップの音は1種類のみで使い回しています。

NEW LOOPS「Club Impacts」から、「Discharge」を使いました。

途中から急にフィルターが掛かって音がフェードアウトする感じの音です。

ちなみにこれら2つのサンプルパックはバンドル版があるので、そっちを買った方が良いです。

 

ただ、それ以外にも色々とエフェクトを使っています。

イントロの『エバ』の文字が出るのと同時に鳴っている独特な音はNEW LOOPS「Club Impacts」の「Weebly」です。

Hi-TechとPsychedelic Tranceの間などを繋げているシンバルの音も、同じサンプルパックの「Rev Cymbal」を使っています。

 

そして、ラスサビの入りではKYMOGRAPH「Excimer」の「FX_CrystalBreath_X_150」を使用しています。

すごく良い音なんですが、前半の音を切り落として後半部分だけ使っています。勿体無い。


オートファジーのイントロのあの音

それから、サンプルパックではないのですが、柊キライさんが『オートファジー』のイントロに使われている音を配布していらっしゃったので、それもアクセントとしてわずかに使用しています。

こういう機会にこそ使えると思ったので、ありがたく使わせていただきました。

イントロのフレーズをこれで鳴らしたり、裏打ちでベースとして鳴らしたりしています。

すごく音量が小さいのでほぼ聴き取れませんが、あるとノリが良くなった+低音が安定した感じがしたので採用しました。

 

これから気合入れて頑張るぞ!

と、まぁ、こういった感じで「エバ(工事中Remix)」が完成したというわけですね。

今回の作品は冒頭で述べた通り、様々なランキングにランクインしています。

 

これも、僕のアレンジを紹介してくださった柊キライさん、そしてたくさん聴いてくださった皆さんのおかげです。本当にありがとうございます。

それから、このアレンジのニコカラ(on/off vocal)や、三次創作のMMD動画まで、様々な派生作品が制作されています。

本当に嬉しい限りです。感謝してもしきれません。ありがとうございます。

 

さて、実のところこのアレンジを投稿した頃、僕はまだ「工事現場P」でした。要するにまだ未熟で、自分に甘かったというわけです。

しかし、今回のヒット、それから柊キライさんにフォローされたということを受け、身が引き締まりました。

ここから先、生半可な気持ちでは作品を作れないな…と。

 

それを機に、名前を「ヒズミ零」に改め、ガバキックを煮詰め、音楽理論を学び、編曲を工夫し、現代文が得意な兄に作詞を任せ…など、様々なアップデートを施しました。 

今後はより一層努力します。今後ともヒズミ零の作品をよろしくお願いいたします。

 

2020/06/20 19:00に、ヒズミ零としては初投稿となるオリジナル曲『パペッタ』を投稿します。

全速力で破滅に向かう曲なので楽しみにしていてください。めちゃくちゃ速いです。

 

余談ですが、『ボッカデラベリタ(工事中Remix)』もこっそり制作しています。

こちらのアレンジは曲のなかで7回くらいジャンルが変わるカオスなものとなっています。

夏くらいには投稿しますので、楽しみに待っていてください。

 

それでは、ヒズミ零でした。さよなら~。